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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第5部 その後編

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第90話 新しい家族

 結婚から一年ほどが経った頃、僕と葵さんの間にも、大きな変化が訪れていた。


 ちょうど、大和が、服役している時期のことだった。


     *


「赤ちゃんが、できたみたい」


 葵さんから、そう告げられた日のことを、僕は、今でも、鮮明に覚えている。


 驚きと、喜びが、同時に押し寄せてきて、僕は、しばらく、言葉を発することができなかった。


     *


「本当に……?」


「うん。病院で、確認してもらったから、間違いないよ」


 その言葉に、僕は、葵さんを、そっと抱きしめた。


「ありがとう」


 自然と、そんな言葉が、口から溢れ出ていた。


     *


 妊娠期間中、僕は、これまで以上に、家庭を優先するよう、意識するようになった。


 事業の運営は、信頼できるスタッフに、より多くを任せるようにし、僕自身は、極力、葵さんのそばにいる時間を、増やしていった。


     *


「無理しなくていいのに」


 葵さんは、そう言ってくれたけれど、僕は、首を横に振った。


「これまで、事業にかまけて、家庭を、後回しにしてきた自覚があるから。これからは、ちゃんと、バランス取っていきたいんだ」


     *


 出産予定日が近づくにつれ、僕は、次第に、緊張感を募らせていった。


「大丈夫だよ、晴信さんの方が、緊張してどうするの」


 葵さんに、そう笑われることも、しばしばだった。


     *


 そして、ついに、その日がやってきた。


 長い陣痛の末、無事に、僕らの元に、新しい命が誕生した。


     *


「おめでとうございます。元気な、男の子ですよ」


 助産師の言葉に、僕は、涙が止まらなくなっていた。


 小さな、小さな手。弱々しい泣き声。それでも、確かに、そこにある、新しい命。


     *


「よく頑張ったね、葵さん」


 僕がそう言うと、葵さんは、疲れ切った様子ながらも、幸せそうに微笑んだ。


「ありがとう。すごく、幸せ」


     *


 それから、二年ほど経った頃、僕らの間には、もう一人、新しい命――今度は、女の子が誕生した。


 こうして、僕らの家族は、四人家族へと、賑やかに、成長していった。


     *


「大和にも、報告しなきゃな」


 僕がそう言うと、葵さんも、頷いた。


「きっと、喜んでくれるよ」


     *


 長男の誕生については、当時、服役中だった大和に、手紙で報告した。


 面会は、相変わらず、叶わないままだった。それでも、返ってきた手紙には、短いながらも、温かい言葉が綴られていた。


『おめでとう。子供の顔、早く見てみたいけど、今は、我慢するしかないな。元気に育ててやってくれ』


 その一文を、僕は、何度も、読み返した。


     *


 二年後、長女が生まれた頃には、大和は、すでに出所し、MMAへの挑戦を始めていた。


「お前んとこに、また子供が生まれたのか」


 電話越しの大和の声は、心から嬉しそうだった。


「おめでとう、本当に」


「ありがとう。落ち着いたら、会いに来てほしい」


「もちろんだ。楽しみにしてる」


     *


 こうして、僕らの家族に、新しい命が加わった。


 この子供たちが、これから、どんな人生を歩んでいくのか。


 その未来には、大和という存在も、きっと、大きな意味を持つことになるのだろうと、僕は、この時、既に、予感していた。

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