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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第5部 その後編

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第84話 海を越えて

「正式に、オファーが来ました」


 黒崎代表から、そう連絡があったのは、それから、数週間後のことだった。


     *


「アメリカの大手総合格闘技団体からです。桜井選手の試合映像を見て、ぜひ、うちの舞台で戦ってほしいと」


 その報せに、僕は、胸が高鳴るのを感じた。


「これは、大和にとって、大きなチャンスですね」


「はい。ただ」


 黒崎代表は、少し表情を曇らせた。


「うちとしては、正直、複雑な心境でもあります。桜井選手は、うちの看板選手に、育ちつつありましたから」


 その言葉に、僕は、頷いた。


「でも、彼にとって、最善の道を、選んでほしいと思っています」


「分かっています。だからこそ、私も、この話を、隠さずに、お伝えしました」


     *


 その夜、僕は、大和に、このオファーのことを伝えた。


「アメリカ……?」


 大和は、驚いた様子で、そう繰り返した。


「うん。向こうの団体が、大和のことを、高く評価してくれてるみたいだ」


     *


「正直、実感湧かねえよ」


 大和は、そう言いながらも、その目には、隠しきれない興奮の色が浮かんでいた。


「オッサンが、いつか、世界で戦いたいって、ボクシング時代、よく言ってたんだよな」


「そうだったの?」


「ああ。まあ、俺自身は、ボクシングじゃ、その夢、叶えられなかったけど」


 大和は、少し遠い目をした。


     *


「まさか、こんな形で、世界の舞台に立てるチャンスが来るとはな」


 その言葉に、僕は、胸が熱くなった。


「行きたい?」


 僕が、そう尋ねると、大和は、迷わず、頷いた。


「行きたい。挑戦してみたい」


     *


 決断は、早かった。


 大和は、すぐに、アメリカ行きを決意した。


「言葉の壁とか、生活環境とか、色々、大変だとは思うけどな」


 大和は、そう言いながらも、その表情には、確かな決意が滲んでいた。


     *


「僕も、できる限り、サポートするよ」


 僕は、そう約束した。


「渡航の手続きとか、向こうでの生活の準備とか、何でも協力する」


「ありがとうな」


 大和は、素直に、そう言った。


     *


「葵さんにも、報告しなきゃな」


 僕がそう言うと、大和は、少し照れくさそうに頷いた。


「奥さんにも、世話になりっぱなしだしな」


     *


 その夜、葵さんに、この報せを伝えると、彼女は、目を輝かせて、喜んでくれた。


「すごい! 世界の舞台で戦うなんて」


「うん。応援したいと思ってる」


「もちろん。私も、全力で応援する」


 その言葉に、僕は、心強さを感じた。


     *


 こうして、大和は、新たな挑戦の地――アメリカへと、旅立つ準備を始めることになった。


 その道のりは、決して平坦なものではないだろう。それでも、大和の目には、これまでにない、力強い光が、宿っていた。


 この挑戦の先に、どんな未来が待っているのか。


 僕らは、その答えを、これから、共に見届けていくことになる。

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