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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第4部 再起編

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第82話 デビュー戦

 リングに上がった大和は、対戦相手――「タイフーン風間」こと、風間隼と、対峙していた。


 風間は、その名の通り、荒々しい打撃を武器とする選手だった。がっしりとした体格から繰り出される拳は、見るからに、破壊力を感じさせた。


     *


 ゴングが、鳴った。


 試合開始と同時に、風間が、猛然と距離を詰めてきた。


 噂通りの、暴風のような連打。大和は、それを、慎重に、後方へ捌きながら、様子を窺っていた。


     *


「桜井、下がるだけか!?」


 観客席から、そんな声が飛んだ。


 でも、僕には、分かっていた。これは、大和なりの、冷静な戦略だった。


 打撃の間合いを、正確に測る。組み付かれないよう、常に、距離を意識する。


 練習で、何度も、何度も、繰り返してきたことだった。


     *


 二分ほど、探り合うような展開が続いた。


 風間が、痺れを切らしたように、大きなタックルを仕掛けてきた。


 その瞬間、僕は、思わず、息を止めた。


     *


 大和の腰が、素早く落ちた。


 練習で、何百回も繰り返してきた、テイクダウンディフェンスの動き。


 風間の突進を、しっかりと受け止め、崩されることなく、その場に踏みとどまった。


「効いてないぞ!」


 僕は、思わず、声を上げていた。


     *


 組み付いてきた風間を、大和は、力任せに、押し返した。


 距離が、再び、開いた。


 その瞬間だった。


     *


 風間が、体勢を立て直そうとした、ほんの一瞬の隙。


 大和の右拳が、まるで、光のような速さで、風間の顎を捉えた。


 乾いた、重い音が、会場に響いた。


     *


 風間の体が、糸の切れた人形のように、崩れ落ちた。


 レフェリーが、慌てて駆け寄り、試合の続行が不可能であることを、確認する。


「ストップ!!」


 その声と共に、レフェリーが、両手を大きく交差させた。


     *


「ノックアウト!! 勝者、桜井大和!!」


 アナウンスが、会場に響き渡った瞬間、地鳴りのような歓声が、アリーナ全体を、包み込んだ。


     *


 僕は、思わず、立ち上がっていた。


「やった……! やったぞ、大和!!」


 声を張り上げながら、僕は、涙が止まらなくなっていた。


     *


 リングの上で、大和は、しばらく、呆然と立ち尽くしていた。


 やがて、その顔に、これまで見たことのないような、晴れやかな笑顔が浮かんだ。


 両手を高く突き上げ、観客の声援に応える大和の姿を、僕は、心の底から、誇らしく思っていた。


     *


 試合後のインタビューで、大和は、興奮を隠しきれない様子で、こう語った。


「畑違いの世界で、正直、不安だらけだった。でも、今日、リングに上がって、確信した。俺は、まだ、戦える。まだ、輝ける場所が、あるんだって」


     *


 その言葉を、僕は、客席から、噛み締めるように聞いていた。


 あの日、動画配信サイトで見た、一つの映像から始まった、この挑戦。


 多くの困難を乗り越えて、大和は、ついに、新しい舞台で、輝きを取り戻した。


     *


 これは、終わりではなく、始まりだった。


 大和にとっての、新しい人生の、第一歩。


 その隣で、僕もまた、これから続く、彼の新しい戦いを、支え続けていくことを、改めて、心に誓っていた。

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