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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第4部 再起編

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第79話 妻の理解

 大和の練習が本格化していく中、僕は、事業と、大和のサポートを、同時にこなす日々を送っていた。


 当然、家庭を顧みる時間は、以前よりも、少なくなっていた。


     *


「最近、帰り遅いね」


 ある夜、葵さんが、そう声をかけてきた。


「ごめん。大和のこともあって、色々、立て込んでて」


 僕がそう言うと、葵さんは、少し寂しそうな顔をした。


「ううん、責めてるわけじゃないよ。ただ、心配で」


     *


「大和さんのこと、応援したい気持ちは、私も、本当にあるの」


 葵さんは、そう続けた。


「でも、正直、晴信さんが、無理をしすぎてないか、心配になる時があって」


 その言葉に、僕は、頷いた。


「うん、分かってる。ちゃんと、気をつけるようにする」


     *


「今度、大和さんの練習、見に行ってもいい?」


 ある日、葵さんが、そう提案してきた。


「え? 大和に?」


「うん。話には、色々聞いてるけど、実際に会って、どんな人なのか、ちゃんと知りたいなって」


 その提案に、僕は、少し嬉しくなった。


     *


 後日、僕は、葵さんを連れて、大和のジムを訪れた。


「初めまして。武田の妻の、葵です」


 葵さんが、そう挨拶すると、大和は、少し緊張した様子で、頭を下げた。


「桜井です。いつも、晴信が、世話になってます」


「こちらこそ。いつも、晴信さんが、お世話になってますよね」


 その言葉に、大和は、少し困ったように笑った。


「いや、世話になってるのは、俺の方で」


     *


 練習の様子を見学しながら、葵さんは、真剣な表情で、大和の動きを見つめていた。


「すごいね、迫力が全然違う」


 スパーリングを終えた大和に、葵さんは、素直な感想を伝えた。


「ありがとうございます」


 大和は、照れくさそうに、そう答えた。


     *


 練習後、三人で、軽い食事に行くことになった。


「晴信さんから、これまでのこと、色々聞きました」


 葵さんが、そう切り出した。


「高校時代のこと、誘拐未遂のこと、そして、会社を守ってくれたこと。全部」


 その言葉に、大和は、少し気まずそうな顔をした。


「別に、大したことじゃ……」


「大したことですよ」


 葵さんが、はっきりと、そう言い切った。


「桜井さんがいなかったら、私は、今、こうして、晴信さんと一緒にいられなかったかもしれない。それを思うと、本当に、感謝しかないです」


     *


 その言葉に、大和は、しばらく、何も言えずにいた。


「……ありがとうございます」


 やがて、絞り出すように、そう答えた。


     *


「これから、私にも、何か、手伝えることがあれば、言ってください」


 葵さんは、そう申し出た。


「桜井さんの応援、私も、一緒にさせてください」


 その言葉に、僕は、胸が熱くなった。


     *


 この日を境に、葵さんは、大和の挑戦を、心から応援してくれるようになった。


 デビュー戦に向けた準備は、食事の管理や、当日の応援体制など、様々な面で、葵さんの協力を得られるようになった。


「家族総出での応援だな」


 大和が、少し照れくさそうに、そう言ったことがあった。


「そうだよ。大和は、もう、僕にとって、家族みたいなものだから」


 僕がそう言うと、大和は、何も言わずに、ただ、小さく笑った。


     *


 こうして、家庭内でも、大和を支える体制が、着実に整っていった。


 デビュー戦という大舞台に向けて、僕らの結束は、より一層、強まっていった。

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