第79話 妻の理解
大和の練習が本格化していく中、僕は、事業と、大和のサポートを、同時にこなす日々を送っていた。
当然、家庭を顧みる時間は、以前よりも、少なくなっていた。
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「最近、帰り遅いね」
ある夜、葵さんが、そう声をかけてきた。
「ごめん。大和のこともあって、色々、立て込んでて」
僕がそう言うと、葵さんは、少し寂しそうな顔をした。
「ううん、責めてるわけじゃないよ。ただ、心配で」
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「大和さんのこと、応援したい気持ちは、私も、本当にあるの」
葵さんは、そう続けた。
「でも、正直、晴信さんが、無理をしすぎてないか、心配になる時があって」
その言葉に、僕は、頷いた。
「うん、分かってる。ちゃんと、気をつけるようにする」
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「今度、大和さんの練習、見に行ってもいい?」
ある日、葵さんが、そう提案してきた。
「え? 大和に?」
「うん。話には、色々聞いてるけど、実際に会って、どんな人なのか、ちゃんと知りたいなって」
その提案に、僕は、少し嬉しくなった。
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後日、僕は、葵さんを連れて、大和のジムを訪れた。
「初めまして。武田の妻の、葵です」
葵さんが、そう挨拶すると、大和は、少し緊張した様子で、頭を下げた。
「桜井です。いつも、晴信が、世話になってます」
「こちらこそ。いつも、晴信さんが、お世話になってますよね」
その言葉に、大和は、少し困ったように笑った。
「いや、世話になってるのは、俺の方で」
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練習の様子を見学しながら、葵さんは、真剣な表情で、大和の動きを見つめていた。
「すごいね、迫力が全然違う」
スパーリングを終えた大和に、葵さんは、素直な感想を伝えた。
「ありがとうございます」
大和は、照れくさそうに、そう答えた。
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練習後、三人で、軽い食事に行くことになった。
「晴信さんから、これまでのこと、色々聞きました」
葵さんが、そう切り出した。
「高校時代のこと、誘拐未遂のこと、そして、会社を守ってくれたこと。全部」
その言葉に、大和は、少し気まずそうな顔をした。
「別に、大したことじゃ……」
「大したことですよ」
葵さんが、はっきりと、そう言い切った。
「桜井さんがいなかったら、私は、今、こうして、晴信さんと一緒にいられなかったかもしれない。それを思うと、本当に、感謝しかないです」
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その言葉に、大和は、しばらく、何も言えずにいた。
「……ありがとうございます」
やがて、絞り出すように、そう答えた。
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「これから、私にも、何か、手伝えることがあれば、言ってください」
葵さんは、そう申し出た。
「桜井さんの応援、私も、一緒にさせてください」
その言葉に、僕は、胸が熱くなった。
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この日を境に、葵さんは、大和の挑戦を、心から応援してくれるようになった。
デビュー戦に向けた準備は、食事の管理や、当日の応援体制など、様々な面で、葵さんの協力を得られるようになった。
「家族総出での応援だな」
大和が、少し照れくさそうに、そう言ったことがあった。
「そうだよ。大和は、もう、僕にとって、家族みたいなものだから」
僕がそう言うと、大和は、何も言わずに、ただ、小さく笑った。
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こうして、家庭内でも、大和を支える体制が、着実に整っていった。
デビュー戦という大舞台に向けて、僕らの結束は、より一層、強まっていった。




