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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第4部 再起編

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第78話 短期間の実力

 練習を始めてから、二ヶ月ほどが経った頃、ジムの会長から、直接、話を聞く機会があった。


     *


「正直、驚いてます」


 会長は、そう切り出した。


「普通、ボクシング一筋だった選手が、総合格闘技に転向するのは、簡単なことじゃない。特に、組技の部分は、一朝一夕には身につかないものなんです」


「大和は、どうですか」


 僕が、そう尋ねると、会長は、満足そうに頷いた。


「桜井さんの場合、テイクダウンディフェンスに関しては、及第点まで来てると思います。完璧とは言えないですが、簡単には倒されないレベルには、達してる」


     *


「何より」


 会長は、続けた。


「あの打撃のセンスと、パンチ力は、本物です。うちのジムの選手と比べても、頭一つ抜けてる。この短期間で、ここまで仕上げてきたのは、正直、驚異的ですよ」


 その評価に、僕は、胸が熱くなった。


     *


「本人の、練習への取り組み方も、素晴らしいんです」


 会長は、そう付け加えた。


「誰よりも早く来て、誰よりも遅くまで残る。基本の反復練習も、一切、手を抜かない。ボクシングで培った、あの真面目さが、そのまま、こちらの競技にも、活きてるんだと思います」


     *


「デビュー戦、そろそろ、組めそうですか」


 僕が、そう尋ねると、会長は、力強く頷いた。


「はい。VICTORの黒崎代表とも、話を進めています。桜井さんの実力なら、十分に、通用すると思いますよ」


     *


 その夜、僕は、大和に、この評価を伝えた。


「会長が、褒めてたよ。この短期間で、ここまで仕上げてきたのは、驚異的だって」


 大和は、少し照れくさそうな顔をした。


「まあ、必死こいてやってきただけだよ。ボクシングん時と、変わんねえ」


     *


「怖くないの? デビュー戦」


 僕が、そう尋ねると、大和は、少し考えてから答えた。


「怖くない、って言ったら、嘘になる。畑違いの競技で、しかも、こんな短期間の準備だ。不安がないわけじゃない」


「でも?」


「でも、それ以上に、楽しみな気持ちの方が、強いかもな」


 大和は、そう言って、少し笑った。


     *


「久しぶりなんだよ、こういう感覚。何かに向かって、必死に努力して、それが、少しずつ、形になっていく。この感覚、なんか、忘れかけてた」


 その言葉に、僕は、深く頷いた。


「大和らしいよ、それ」


「そうか?」


「うん。昔から、そういう、一途なところ、変わってないと思う」


     *


「デビュー戦の日程、正式に決まったら、また連絡するよ」


 僕がそう言うと、大和は、真剣な表情で、頷いた。


「ああ。今度こそ、ちゃんと、結果、出してみせるよ」


 その言葉に、僕は、確かな手応えを感じていた。


 畑違いの世界に飛び込んだ大和が、短期間で、確かな実力を身につけていた。


 あとは、その実力を、舞台の上で、証明するだけだった。

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