第78話 短期間の実力
練習を始めてから、二ヶ月ほどが経った頃、ジムの会長から、直接、話を聞く機会があった。
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「正直、驚いてます」
会長は、そう切り出した。
「普通、ボクシング一筋だった選手が、総合格闘技に転向するのは、簡単なことじゃない。特に、組技の部分は、一朝一夕には身につかないものなんです」
「大和は、どうですか」
僕が、そう尋ねると、会長は、満足そうに頷いた。
「桜井さんの場合、テイクダウンディフェンスに関しては、及第点まで来てると思います。完璧とは言えないですが、簡単には倒されないレベルには、達してる」
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「何より」
会長は、続けた。
「あの打撃のセンスと、パンチ力は、本物です。うちのジムの選手と比べても、頭一つ抜けてる。この短期間で、ここまで仕上げてきたのは、正直、驚異的ですよ」
その評価に、僕は、胸が熱くなった。
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「本人の、練習への取り組み方も、素晴らしいんです」
会長は、そう付け加えた。
「誰よりも早く来て、誰よりも遅くまで残る。基本の反復練習も、一切、手を抜かない。ボクシングで培った、あの真面目さが、そのまま、こちらの競技にも、活きてるんだと思います」
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「デビュー戦、そろそろ、組めそうですか」
僕が、そう尋ねると、会長は、力強く頷いた。
「はい。VICTORの黒崎代表とも、話を進めています。桜井さんの実力なら、十分に、通用すると思いますよ」
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その夜、僕は、大和に、この評価を伝えた。
「会長が、褒めてたよ。この短期間で、ここまで仕上げてきたのは、驚異的だって」
大和は、少し照れくさそうな顔をした。
「まあ、必死こいてやってきただけだよ。ボクシングん時と、変わんねえ」
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「怖くないの? デビュー戦」
僕が、そう尋ねると、大和は、少し考えてから答えた。
「怖くない、って言ったら、嘘になる。畑違いの競技で、しかも、こんな短期間の準備だ。不安がないわけじゃない」
「でも?」
「でも、それ以上に、楽しみな気持ちの方が、強いかもな」
大和は、そう言って、少し笑った。
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「久しぶりなんだよ、こういう感覚。何かに向かって、必死に努力して、それが、少しずつ、形になっていく。この感覚、なんか、忘れかけてた」
その言葉に、僕は、深く頷いた。
「大和らしいよ、それ」
「そうか?」
「うん。昔から、そういう、一途なところ、変わってないと思う」
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「デビュー戦の日程、正式に決まったら、また連絡するよ」
僕がそう言うと、大和は、真剣な表情で、頷いた。
「ああ。今度こそ、ちゃんと、結果、出してみせるよ」
その言葉に、僕は、確かな手応えを感じていた。
畑違いの世界に飛び込んだ大和が、短期間で、確かな実力を身につけていた。
あとは、その実力を、舞台の上で、証明するだけだった。




