第77話 消えないパンチ力
テイクダウンディフェンスの練習と並行して、大和は、スパーリングにも、本格的に取り組み始めていた。
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「今日、スパーリングやったんだけどよ」
ある日、大和が、興奮した様子で、そう報告してきた。
「相手、うちのジムでも、中堅どころの選手だったんだけど」
「どうだった?」
僕が、そう尋ねると、大和は、少し得意げな顔をした。
「一発、まともに入れたら、あっさり効いてた。ボクシングのパンチ力、そのまま通用するんだなって、実感したよ」
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その報告を、僕は、後日、トレーナーからも、詳しく聞くことになった。
「桜井さんのパンチ力は、正直、うちのジムでも、群を抜いてますね」
トレーナーは、感心したように、そう言った。
「総合格闘技の選手は、グローブが小さい分、ボクシング以上に、一撃の破壊力が重要になります。桜井さんのパンチは、その点で、間違いなく、大きな武器になる」
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「ただ」
トレーナーは、少し慎重な口調で、続けた。
「その武器を、生かすためには、距離感が重要です。組み付かれる前に、しっかり打撃の間合いを支配できるかどうか。そこが、鍵になります」
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その方針に基づき、大和の練習は、次第に、明確な戦略性を帯びていった。
「相手を、組ませない。とにかく、打撃の距離を、支配し続ける」
大和は、そう繰り返し、口にするようになっていた。
「一発でも、まともに当てられれば、勝機がある。それまでは、とにかく、距離を保って、組まれないように、立ち回る」
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「フットワークの練習も、増やしましょう」
トレーナーの提案で、大和は、距離を取りながら、相手の攻撃をかわす、フットワークの練習にも、力を入れるようになった。
「ボクシングでも、フットワークは、大事にしてたからな」
大和は、そう言いながら、意欲的に、練習に取り組んでいた。
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ある日のスパーリングで、大和は、印象的な結果を残した。
「相手の顔面に、綺麗にカウンター、決まったんだよ」
大和は、興奮を隠しきれない様子で、そう報告してきた。
「相手が、タックルに入ろうとした、その瞬間を狙って、右のストレート。見事に、決まった」
「すごいじゃん!」
僕が、そう言うと、大和は、少し照れくさそうに笑った。
「まだ、実戦で通用するかは、分かんねえけどな。それでも、手応えは、感じてる」
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「桜井さんの戦い方、方向性が見えてきましたね」
トレーナーは、そう評価した。
「距離を支配して、相手が仕掛けてくる瞬間を、カウンターで仕留める。これなら、組技の未熟さを、補って余りある戦い方ができるかもしれません」
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その言葉に、僕は、大きな希望を感じた。
畑違いの世界に飛び込んだ大和が、着実に、自分なりの戦い方を、見つけ始めている。
その姿は、かつて、ボクシングで才能を開花させていった、あの頃の大和と、重なって見えた。
デビュー戦という大舞台まで、あと少し。
僕らは、その日に向けて、着実に、準備を進めていった。




