↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第4部 再起編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
71/93

第71話 感謝の言葉

「大した話じゃない、なんて、思ってほしくないんだ」


 僕は、そう続けた。


「大和は、僕のために、二度も命がけで動いてくれた。それだけじゃない。会社まで、守ってくれた」


 大和は、視線を落としたまま、何も言わなかった。


     *


「高校の時、いじめから助けてくれた。誘拐されそうになった時も、助けてくれた。そして、今回、僕の会社を、狙っていた組織から、守ってくれた」


 僕は、一つ一つ、指折り数えるように、これまでの恩を、口にしていった。


「三度も、大和に、命を、そして人生を、救われてきたんだ」


     *


「別に、そんな、大層なことじゃねえよ」


 大和は、そう言って、視線を逸らした。


「その都度、自分がやりたくてやったことだ。お前に、恩を着せるつもりなんて、なかった」


「分かってる」


 僕は、そう頷いた。


「大和が、見返りを求めてないことは、分かってる。だからこそ、僕は、ちゃんと、感謝を伝えたいんだ」


     *


「ありがとう」


 僕は、深く、頭を下げた。


「本当に、ありがとう。大和がいなかったら、今の僕は、存在してなかった」


 大和は、しばらく、何も答えなかった。


「顔上げろよ、みっともねえ」


 やがて、そう呟いた大和の声は、少し震えているように聞こえた。


     *


 顔を上げると、大和は、複雑な表情を浮かべていた。


 喜んでいるのか、それとも、居心地悪く感じているのか。その両方が、混ざり合っているような表情だった。


「そんな風に、面と向かって言われると、正直、どう反応していいか、分かんねえよ」


 大和は、照れくさそうに、そう言った。


     *


「それに」


 大和は、少し間を置いてから、続けた。


「俺の方こそ、お前に、色々迷惑かけてきた自覚もある。結婚式にも出られなかったし、面会も、拒否し続けてたし」


「あれは、大和なりの理由があったんだろ」


 僕がそう言うと、大和は、少し驚いたような顔をした。


「なんで、それを……」


「手紙で、少しだけ、分かった気がしたから」


 その言葉に、大和は、気まずそうに、目を逸らした。


     *


「感謝してるのは、僕だけじゃないよ」


 僕は、そう続けた。


「母さんも、大和のことを、ずっと恩人として、感謝してる。葵さんにも、これまでのこと、全部話した。彼女も、大和のことを、心配してる」


「お前の、奥さんが……?」


 大和は、少し意外そうな顔をした。


「うん。会ったこともないのに、大和のことを、大切に思ってくれてる」


 その言葉に、大和は、何か、込み上げるものを堪えるような表情を見せた。


     *


「なあ、大和」


 僕は、テーブルの上で、拳を握りしめながら、続けた。


「これから、僕は、大和に、恩返しをしたいと思ってる」


「恩返し……?」


 大和は、怪訝そうな顔をした。


「別に、そんなの、必要ねえよ」


「必要あるんだよ、僕には」


 僕は、強い口調で、そう言い返した。


「大和が、僕のために失ったものの大きさを、僕は、ずっと、正しく理解できてなかった。これからは、それを、ちゃんと、埋め合わせたいんだ」


     *


 大和は、しばらく、僕の顔を、じっと見つめていた。


「お前、なんか、変わったな」


 やがて、そう呟いた。


「前は、もっと、おどおどしてたのに」


「大和のおかげだよ、それも」


 僕がそう言うと、大和は、小さく、笑った。


 その笑顔を見て、僕は、これから伝えるべき、本当の提案――総合格闘技イベントへの出場――を、切り出す決心を固めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。