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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第4部 再起編

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第70話 数年ぶりの対面

 深く息を吸い込み、僕は、大和の元へと、一歩ずつ、歩み寄っていった。


     *


「大和」


 その名前を呼ぶと、大和は、驚いた様子で振り返った。


 その顔を、正面から見るのは、本当に、数年ぶりのことだった。


     *


「……晴信?」


 大和の声には、戸惑いが滲んでいた。


「なんで、お前が、ここに」


「話したいことがあって。ずっと、会いたかった」


 僕がそう言うと、大和は、視線を逸らした。


     *


 しばらくの間、二人の間には、重い沈黙が流れた。


 何から話せばいいのか、僕自身、分からなかった。伝えたいことは、山ほどあった。それなのに、いざ目の前にすると、言葉が、うまく出てこなかった。


     *


「……痩せたな」


 ようやく、僕が絞り出したのは、そんな、当たり障りのない一言だった。


「まあな。刑務所の飯、そんなに旨くねえから」


 大和は、自嘲気味に、そう答えた。


     *


「元気だった?」


「まあ、それなりに」


 その返事は、以前と、あまり変わらない、素っ気ないものだった。それでも、僕は、その声を、確かに聞けたことに、安堵を覚えていた。


     *


「なんで、俺のこと、探したりしたんだよ」


 大和が、そう尋ねてきた。その声には、警戒するような響きがあった。


「会って、話したかったから」


「わざわざ、調査会社まで使って?」


 その問いに、僕は、少し驚いた。


「なんで、それを……」


「教習所の受付が、なんか、変な問い合わせがあったって、話してた。すぐに、お前だと思ったよ」


     *


「悪いな、迷惑かけて」


 僕がそう言うと、大和は、首を横に振った。


「迷惑とは、思ってねえよ。ただ……」


 大和は、言葉を切ってから、続けた。


「なんで、俺なんかに、そこまでするのか、正直、分かんねえんだよ」


 その言葉に、僕は、胸が締め付けられる思いがした。


     *


「立ち話も、なんだから」


 僕は、そう提案した。


「近くに、喫茶店とかないかな。少し、話をさせてほしい」


 大和は、しばらく、迷うような様子を見せた後、小さく頷いた。


「……分かったよ。少しだけなら」


     *


 近くの喫茶店に入り、僕らは、向かい合って座った。


 注文したコーヒーが運ばれてくるまで、僕らは、また、沈黙していた。


     *


「何、話したいんだよ」


 やがて、大和が、そう切り出した。


「まず、伝えなきゃいけないことがある」


 僕は、深く息を吸い込んだ。


「全部、知ったんだ。あの事件の、本当の理由」


 その言葉に、大和の表情が、明らかに強張った。


     *


「誰から、聞いたんだよ」


 大和の声には、動揺が滲んでいた。


「コンサルタントから。うちの会社が、半グレ組織に狙われてたこと、そして、それを、大和が、一人で阻止してくれてたこと」


 僕がそう言うと、大和は、しばらく、黙り込んでいた。


     *


「別に、大した話じゃねえよ」


 やがて、大和は、そう呟いた。


「たまたま、聞いた話を、放っておけなかっただけだ」


 その、いつも通りの、素っ気ない態度に、僕は、涙が込み上げるのを、堪えられなかった。


 この数年、積み重なっていた想いが、一気に溢れ出しそうだった。


 でも、僕は、ここで、感情に流されるわけにはいかなかった。


 伝えるべきことは、まだ、たくさん残っていた。

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