第70話 数年ぶりの対面
深く息を吸い込み、僕は、大和の元へと、一歩ずつ、歩み寄っていった。
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「大和」
その名前を呼ぶと、大和は、驚いた様子で振り返った。
その顔を、正面から見るのは、本当に、数年ぶりのことだった。
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「……晴信?」
大和の声には、戸惑いが滲んでいた。
「なんで、お前が、ここに」
「話したいことがあって。ずっと、会いたかった」
僕がそう言うと、大和は、視線を逸らした。
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しばらくの間、二人の間には、重い沈黙が流れた。
何から話せばいいのか、僕自身、分からなかった。伝えたいことは、山ほどあった。それなのに、いざ目の前にすると、言葉が、うまく出てこなかった。
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「……痩せたな」
ようやく、僕が絞り出したのは、そんな、当たり障りのない一言だった。
「まあな。刑務所の飯、そんなに旨くねえから」
大和は、自嘲気味に、そう答えた。
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「元気だった?」
「まあ、それなりに」
その返事は、以前と、あまり変わらない、素っ気ないものだった。それでも、僕は、その声を、確かに聞けたことに、安堵を覚えていた。
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「なんで、俺のこと、探したりしたんだよ」
大和が、そう尋ねてきた。その声には、警戒するような響きがあった。
「会って、話したかったから」
「わざわざ、調査会社まで使って?」
その問いに、僕は、少し驚いた。
「なんで、それを……」
「教習所の受付が、なんか、変な問い合わせがあったって、話してた。すぐに、お前だと思ったよ」
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「悪いな、迷惑かけて」
僕がそう言うと、大和は、首を横に振った。
「迷惑とは、思ってねえよ。ただ……」
大和は、言葉を切ってから、続けた。
「なんで、俺なんかに、そこまでするのか、正直、分かんねえんだよ」
その言葉に、僕は、胸が締め付けられる思いがした。
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「立ち話も、なんだから」
僕は、そう提案した。
「近くに、喫茶店とかないかな。少し、話をさせてほしい」
大和は、しばらく、迷うような様子を見せた後、小さく頷いた。
「……分かったよ。少しだけなら」
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近くの喫茶店に入り、僕らは、向かい合って座った。
注文したコーヒーが運ばれてくるまで、僕らは、また、沈黙していた。
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「何、話したいんだよ」
やがて、大和が、そう切り出した。
「まず、伝えなきゃいけないことがある」
僕は、深く息を吸い込んだ。
「全部、知ったんだ。あの事件の、本当の理由」
その言葉に、大和の表情が、明らかに強張った。
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「誰から、聞いたんだよ」
大和の声には、動揺が滲んでいた。
「コンサルタントから。うちの会社が、半グレ組織に狙われてたこと、そして、それを、大和が、一人で阻止してくれてたこと」
僕がそう言うと、大和は、しばらく、黙り込んでいた。
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「別に、大した話じゃねえよ」
やがて、大和は、そう呟いた。
「たまたま、聞いた話を、放っておけなかっただけだ」
その、いつも通りの、素っ気ない態度に、僕は、涙が込み上げるのを、堪えられなかった。
この数年、積み重なっていた想いが、一気に溢れ出しそうだった。
でも、僕は、ここで、感情に流されるわけにはいかなかった。
伝えるべきことは、まだ、たくさん残っていた。




