↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第4部 再起編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/93

第68話 交渉

「VICTOR」の代表との面会は、思っていたよりも、スムーズに設定することができた。


 事業が軌道に乗っていたこともあり、スポンサー候補としての第一印象は、悪くなかったようだった。


     *


「本日は、お時間をいただき、ありがとうございます」


 代表の男性――名前を、黒崎といった――は、鋭い眼光を持ちながらも、物腰は柔らかい人物だった。


「武田さんのことは、以前から存じ上げていますよ。急成長中のSNS、拝見しています」


「ありがとうございます。今日は、スポンサー契約のご相談と、もう一つ、個人的にお願いしたいことがあって伺いました」


     *


 僕は、まず、スポンサー契約についての条件を、丁寧に提示した。


 契約金額、期間、そして、ロゴの露出方法など、事務的な部分は、コンサルタントの助言もあり、スムーズに話が進んだ。


「これだけの規模でご支援いただけるのは、非常にありがたいお話です」


 黒崎代表は、そう言って、資料に目を通していた。


     *


「それで、もう一つのお願い、というのは?」


 黒崎代表が、そう尋ねてきた。僕は、少し緊張しながら、本題を切り出した。


「実は、僕の大切な友人を、こちらの団体で、選手として出場させていただきたいんです」


「友人、ですか」


「はい。桜井大和という男です。元プロボクサーで、日本チャンピオン、東洋太平洋チャンピオンを経験しています」


 その名前に、黒崎代表は、少し眉をひそめた。


「桜井……。もしかして、あの事件の?」


 僕は、頷いた。


「はい。詳しい事情は、お話しできる範囲でお伝えします。ただ、彼の実力は、本物です。ボクシングでの実績は、調べていただければ、すぐに分かると思います」


     *


「正直に申し上げますと」


 黒崎代表は、慎重な口調で、続けた。


「ボクシングでの実績は、素晴らしいと思います。ただ、総合格闘技は、また別の競技です。組技も投げ技も未経験で、しかも、二年間のブランクがある。うちの看板選手として迎えるには、正直、未知数な部分が大きいですね」


「承知しています。だからこそ、スポンサーという形で、責任の一端を、僕自身も担いたいと思っています」


     *


「それと、もう一点」


 黒崎代表は、鋭い目で、僕を見た。


「ご本人は、この話を、承知されているんですか」


 その質問に、僕は、一瞬、言葉に詰まった。


「……まだ、です。彼は、来月、出所する予定です。出所したら、僕から、直接、話をするつもりです」


「本人の意思が確認できていない状態で、契約を進めるというのは、こちらとしても、少々、リスキーですね」


 黒崎代表の言葉は、もっともだった。


     *


「それでも」


 僕は、まっすぐに、黒崎代表を見返した。


「彼が、出場を了承してくれるよう、僕が、必ず説得します。もし、それが叶わなかったとしても」


 僕は、少し間を置いてから、続けた。


「スポンサー契約自体は、彼の出場の有無に関わらず、継続させていただきたいと思っています」


 その言葉に、黒崎代表は、少し驚いたような顔をした。


     *


「それは、つまり」


「彼が出場してくれるかどうかは、彼自身の意思に委ねます。ただ、僕は、この団体の理念――過去に挫折した人間に、再起の場を与えるという理念に、心から共感しています。だから、スポンサーとしての支援は、彼の出場が実現するかどうかに関わらず、続けさせてください」


     *


 その言葉に、黒崎代表は、しばらく、何かを考え込んでいた。


「……分かりました。その覚悟があるなら、こちらとしても、協力させていただきます」


 黒崎代表は、そう言って、右手を差し出した。


「桜井さんが、出場を了承してくださることを、期待しています」


 僕は、その手を、力強く握り返した。


「ありがとうございます。必ず、実現させます」


     *


 こうして、スポンサー契約は、無事に締結された。


 あとは、大和本人を説得することだけが、残された最大の課題だった。


 その課題の重さを、僕は、これから、身をもって知ることになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。