第66話 選んだ道筋
構想を固めるにあたり、僕は、まず、あの動画で見た総合格闘技団体について、徹底的に調べることにした。
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団体の名前は、「VICTOR」といった。
国内で急成長している、比較的新しい総合格闘技団体で、若手選手の発掘や、過去に挫折を経験した選手の再起を、積極的に後押しする方針を打ち出していることで知られていた。
「過去がどうであれ、リングの上で証明すれば、みんなが認めてくれる」
あのインタビューでの選手の言葉も、この団体の理念を、色濃く反映したものだったのだと、調べていくうちに分かってきた。
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調べを進める中で、僕は、自分がこの計画に、どう関わるべきかを、慎重に考えていた。
選択肢は、いくつかあった。
一つは、団体側に、直接、大和の出場を依頼すること。もう一つは、自ら新しい団体を立ち上げること。そして、既存の団体に対して、スポンサーという立場で関わること。
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「直接、出場を頼み込むだけじゃ、正直、弱いと思うんです」
この構想を、事前に相談していたコンサルタントに、僕は、そう説明した。
「実績のない、しかも実刑判決を受けた過去のある選手を、いきなり出場させてほしいと頼んでも、団体側からすれば、リスクの方が大きく映るはずです」
コンサルタントは、頷きながら、聞いていた。
「新しい団体を、一から立ち上げるという手もあるとは思うんですが、それだと、時間がかかりすぎます。大和が出所してから、なるべく早く、次の目標を持たせてあげたいんです」
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「だから、スポンサーという立場で関わるのが、一番、現実的だと思っています」
僕は、そう続けた。
「スポンサーとして、団体の運営に貢献できれば、こちらの提案にも、耳を傾けてもらいやすくなります。それに」
僕は、少し言葉を選びながら、続けた。
「うちの事業――『Suki』のユーザー層と、格闘技ファンの層は、実は、意外と重なる部分があるんです。内向的で、何かに強く憧れを持っている人たちが、多いので」
「なるほど。事業としての相乗効果も、期待できるということですね」
コンサルタントの言葉に、僕は頷いた。
「はい。慈善事業として無理に押し通すのではなく、事業としても意味のある形にしたいんです。その方が、社内の理解も、得やすいと思うので」
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「ただ、スポンサーになったからといって、必ずしも、選手の出場まで、口を出せるわけではないですよね」
コンサルタントが、そう指摘した。
「はい、その通りです。あくまで、団体側の裁量が大きいことは、承知しています」
僕は、正直に答えた。
「それでも、何もしないよりは、可能性がある。だから、まずは、この道を選びたいと思っています」
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「分かりました。それなら、契約交渉に向けて、必要な資料を、一緒に整理していきましょう」
コンサルタントの言葉に、僕は、深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
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こうして、僕は、「VICTOR」という団体を、スポンサーという形で支援するという、具体的な道筋を固めていった。
直接的な口利きでも、一からの団体設立でもない、この遠回りに見える道こそが、最も確実に、大和を、再び日の当たる場所へ導く手段だと、僕は信じていた。
あとは、この計画を、実際に、団体側へ提案するだけだった。




