第64話 気づき
コンサルタントから、あの真実を聞かされた夜、僕は、一人、これまでの大和との日々を、じっくりと思い返していた。
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高校一年の冬、いじめられていた僕を、大和は、身を挺して救ってくれた。
その恩に報いたいと思いながらも、僕は、大学進学、事業の成功と、自分の人生を前へ進めることに、いつしか夢中になっていた。
大和が、伸び悩むキャリアの中で、孤独と鬱屈を抱えていたことにも、深く気づいてやれなかった。
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二十四歳のあの夜、誘拐されかけた僕を、大和は、また救ってくれた。
その代償として、彼は、ライセンスと王座を失った。それでも、僕は、彼の犠牲の大きさを、心のどこかで、正しく理解できていなかった気がする。
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そして、今回。僕の会社を、水面下で狙っていた組織を、大和は、たった一人で、命懸けで阻止してくれていた。
その代償として、彼は、二年間の実刑と、自由を失った。
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二度、僕の命を救い、三度目は、僕の会社そのものを救ってくれていた。
その事実に、改めて思い至ったとき、僕は、これまでの自分の在り方を、深く恥じた。
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振り返れば、僕は、大和に助けられるばかりで、彼に対して、何も返せていなかった。
彼が、僕のために失ったもの――ボクシングという、彼が心血を注いできたもの、才能、そして、社会的な立場。
それら全てを、僕は、何も知らないまま、自分の幸せだけを、積み重ねてきてしまっていた。
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「僕だけが、こんなに恵まれた場所にいていいはずがない」
そう、声に出して呟いていた。
大和が、あれほどの才能を持ちながら、今、日の当たらない場所で、失意の中にいる。
その一方で、自分だけが、事業で成功し、愛する家族を得て、順風満帆な人生を歩んでいる。
その不公平さに、僕は、耐えられなくなっていた。
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「何か、僕にできることはないのか」
これまで、何度も繰り返してきた、その問い。
でも、今、その答えを、僕は、初めて、はっきりと見出しつつあった。
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「何としても、大和を、もう一度、日の当たる場所へ連れて行きたい」
その思いが、はっきりとした決意として、僕の中で固まり始めていた。
方法は、まだ、見えていなかった。それでも、この決意だけは、揺るぎないものになっていた。
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葵さんに、この決意を打ち明けたとき、彼女は、少し驚いた様子を見せた。
「大和さんが、そこまで、あなたのために……」
その言葉に、僕は、これまでの経緯を、初めて、詳しく話すことにした。
いじめの制裁、誘拐未遂からの救出、そして、今回の会社を守るための行動。
全てを聞き終えた葵さんは、しばらく、言葉を失っていた。
「そんな、大切な人のこと、私、何も知らずにいたなんて……」
その言葉に、僕は、頷いた。
「これから、その恩返しをしたいと思ってる。葵さんにも、協力してほしい」
葵さんは、真剣な表情で、頷いてくれた。
「うん。あなたの大恩人のためなら、私も、できる限りのことをするよ」
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こうして、僕は、大和への恩返しという、新たな目標に向かって、動き出すことを決意した。
その決意が、これから、僕の人生を、そして、大和の人生を、大きく動かしていくことになる。
まだ、その道のりは見えていなかったけれど、僕の中には、確かな決意の灯が、静かに燃え始めていた。




