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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第3部 すれ違いと危機編

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第63話 真実を知る日

 大和が収監されてから、一年ほどが経った頃。


 僕は、経営コンサルタントから、思いもよらない話を聞かされることになった。


     *


「武田さん、少し、お伝えしておきたいことがあります」


 定例のオンライン会議の後、コンサルタントが、改まった様子で切り出した。


「実は、去年のことなんですが……御社が、ある半グレ組織のフロント企業から、じわじわと侵食されかけていたことが、後になって分かりまして」


 その言葉に、僕は、息を呑んだ。


「侵食……?」


「ええ。業務提携や投資の話で近づいてきていた企業の中に、実態のない、フロント企業が混じっていたんです。あのまま進んでいたら、御社の経営権に、深く食い込まれていた可能性があります」


     *


「でも、なぜ、それが、今になって……」


 僕がそう尋ねると、コンサルタントは、少し言いにくそうに続けた。


「実は、その組織のトップと幹部が、ある事件をきっかけに、一斉に摘発されていたことが分かりまして。詳しく調べていく中で、御社が標的にされていたことも、明らかになったんです」


「ある事件……?」


 その言葉に、僕は、嫌な予感を覚えた。


     *


「はい。都内のレストランで、経営者を装った会合が開かれていたところに、何者かが乱入し、その場にいた組織のトップと幹部を、叩きのめしたという事件です」


 その説明を聞いた瞬間、僕は、全身の血の気が引くのを感じた。


「その、乱入した人物というのは……」


「桜井大和さん、ですよね」


 その名前を聞いた瞬間、僕は、言葉を失った。


     *


「大和が……。僕の会社を、守るために……?」


 僕の声は、震えていた。


「詳しい経緯は、私も、全てを把握しているわけではありません。ただ、状況から見て、桜井さんが、御社を狙っていた組織の存在を察知し、単独で、その企みを阻止しようとした可能性が高いと、考えています」


     *


 僕は、しばらく、言葉を発することができなかった。


 あの事件。大和が、実刑二年という重い代償を払うことになった、あの事件。


 その理由が、まさか、僕の会社を守るためだったなんて。


     *


「桜井さんは、あなたには、何も伝えていなかったんですね」


 コンサルタントの言葉に、僕は、力なく頷いた。


「はい……。何も、知りませんでした」


「そうですか……。ご友人は、随分と、あなたのことを、大切に思われていたんですね」


 その言葉に、僕は、涙が込み上げるのを、堪えられなかった。


     *


 僕は、思い返していた。


 高校時代のいじめの制裁。誘拐未遂からの救出。そして、今回の、会社を守るための行動。


 二度も、僕の命が救われていた。そして、三度目は、僕の会社そのものが、救われていた。


 その全てを、大和は、僕に何も告げないまま、たった一人で、成し遂げていたのだ。


     *


「僕は、何も知らないまま、彼から、全てを奪ってしまっていたんですね」


 僕が、そう呟くと、コンサルタントは、静かに首を振った。


「奪ったのは、あなたではありません。ただ、この事実を、これから、あなたがどう受け止め、どう行動するかは、あなた次第だと思います」


 その言葉が、僕の中に、深く突き刺さった。


     *


 あの日、僕を見下ろしながら、大和が向けていた、燃えるような目。


 あの日、リングの上で見せた、真剣な眼差し。


 その全てが、この瞬間、一つの意味を持って、僕の中で繋がった。


 ――何か、僕にできることはないのか。


 その問いに、僕は、ようやく、答えを見つけ始めていた。

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