第62話 手紙
大和が、刑務所へ収監されてから、僕は、定期的に手紙を送り続けていた。
面会は、相変わらず、大和本人の意思で、叶わないままだった。それでも、手紙だけは、拒否されずに、届いているようだった。
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『大和へ
元気にしているか、心配しています。返事がなくても構いません。ただ、伝えたいことがあるので、書かせてください。
結婚式は、無事に終わりました。大和がいてくれたら、もっと良かったのにと、何度も思いました。
これからも、大和のことを、ずっと待っています。
武田晴信』
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そんな手紙を、僕は、月に一度のペースで、送り続けていた。
返事は、なかなか来なかった。それでも、僕は、書くことをやめなかった。
届いているかどうかも、正直、確信は持てなかった。それでも、書き続けることだけが、僕にできる、唯一のことだった。
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半年ほど経った頃、初めて、大和からの返事が届いた。
厚みのない、簡素な便箋一枚。それでも、その文字を見た瞬間、僕は、涙が止まらなくなった。
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『晴信へ
いつも手紙、ありがとう。返事、遅くなって悪い。
結婚、おめでとう。葵さんとのこと、心から祝ってる。写真見たけど、綺麗な人だな。お前には、もったいないくらいだ。
こっちは、まあ、それなりにやってる。心配しなくていい。
お前は、お前の人生を、ちゃんと生きろ。俺のことは、気にしなくていい。
大和』
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その手紙を、僕は、何度も読み返した。
短い文面の中に、大和らしい不器用な優しさが、確かに滲んでいた。
「俺のことは、気にしなくていい」
その一言に、僕は、複雑な思いを抱いた。優しさであると同時に、拒絶のようにも感じられたからだ。
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これは、後になって、大和自身の口から聞いた話だ。
「あの手紙、書くの、正直、悩んだんだよ」
大和は、そう振り返った。
「お前の幸せを、心から祝いたい気持ちはあった。でも、俺みたいな犯罪者が、これ以上、お前の人生に関わっていいのかって、ずっと考えてた」
その言葉に、僕は、当時の複雑な思いの理由を、ようやく理解した。
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「出所したら、会いに行かない方がいいんじゃないかって、あの頃、本気で思ってたんだ」
大和は、静かに、続けた。
「お前には、もう、新しい家族がいる。俺みたいな存在が、これ以上関わることが、お前のためになるとは、思えなかった」
その言葉に、僕は、胸が締め付けられる思いだった。
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それでも、僕は、その後も、手紙を送り続けた。
返事は、途切れ途切れではあったけれど、確かに、届き続けていた。
その細い糸のような繋がりが、これから訪れる、僕らの人生の大きな転機まで、僕らを、かろうじて繋ぎ止めていた。




