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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第3部 すれ違いと危機編

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第62話 手紙

 大和が、刑務所へ収監されてから、僕は、定期的に手紙を送り続けていた。


 面会は、相変わらず、大和本人の意思で、叶わないままだった。それでも、手紙だけは、拒否されずに、届いているようだった。


     *


『大和へ


 元気にしているか、心配しています。返事がなくても構いません。ただ、伝えたいことがあるので、書かせてください。


 結婚式は、無事に終わりました。大和がいてくれたら、もっと良かったのにと、何度も思いました。


 これからも、大和のことを、ずっと待っています。


 武田晴信』


     *


 そんな手紙を、僕は、月に一度のペースで、送り続けていた。


 返事は、なかなか来なかった。それでも、僕は、書くことをやめなかった。


 届いているかどうかも、正直、確信は持てなかった。それでも、書き続けることだけが、僕にできる、唯一のことだった。


     *


 半年ほど経った頃、初めて、大和からの返事が届いた。


 厚みのない、簡素な便箋一枚。それでも、その文字を見た瞬間、僕は、涙が止まらなくなった。


     *


『晴信へ


 いつも手紙、ありがとう。返事、遅くなって悪い。


 結婚、おめでとう。葵さんとのこと、心から祝ってる。写真見たけど、綺麗な人だな。お前には、もったいないくらいだ。


 こっちは、まあ、それなりにやってる。心配しなくていい。


 お前は、お前の人生を、ちゃんと生きろ。俺のことは、気にしなくていい。


 大和』


     *


 その手紙を、僕は、何度も読み返した。


 短い文面の中に、大和らしい不器用な優しさが、確かに滲んでいた。


 「俺のことは、気にしなくていい」


 その一言に、僕は、複雑な思いを抱いた。優しさであると同時に、拒絶のようにも感じられたからだ。


     *


 これは、後になって、大和自身の口から聞いた話だ。


「あの手紙、書くの、正直、悩んだんだよ」


 大和は、そう振り返った。


「お前の幸せを、心から祝いたい気持ちはあった。でも、俺みたいな犯罪者が、これ以上、お前の人生に関わっていいのかって、ずっと考えてた」


 その言葉に、僕は、当時の複雑な思いの理由を、ようやく理解した。


     *


「出所したら、会いに行かない方がいいんじゃないかって、あの頃、本気で思ってたんだ」


 大和は、静かに、続けた。


「お前には、もう、新しい家族がいる。俺みたいな存在が、これ以上関わることが、お前のためになるとは、思えなかった」


 その言葉に、僕は、胸が締め付けられる思いだった。


     *


 それでも、僕は、その後も、手紙を送り続けた。


 返事は、途切れ途切れではあったけれど、確かに、届き続けていた。


 その細い糸のような繋がりが、これから訪れる、僕らの人生の大きな転機まで、僕らを、かろうじて繋ぎ止めていた。

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