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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第3部 すれ違いと危機編

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第60話 執行猶予中の代償

 大和の裁判の日程が決まったという連絡を、僕は、下柳の祖父母から受けた。


「傍聴、しても構わないんでしょうか」


 僕がそう尋ねると、祖父は、少し困ったように答えた。


「本人が、あなたに見られたくない、と言っているようで……」


 その言葉に、僕は、胸を締め付けられる思いがした。


     *


 結局、僕は、裁判を直接傍聴することは叶わなかった。


 判決の内容を知ったのは、下柳の祖父母からの、電話越しの報告だった。


「実刑二年、との判決が出ました」


 その言葉に、僕は、息を呑んだ。


「執行猶予期間中の、再度の傷害事件だったことが、重く見られたようです」


     *


 僕は、後になって、詳しい事情を、弁護士から聞くことになった。


「以前の事件で、執行猶予がついていましたよね。その猶予期間中に、今回の事件を起こしてしまったことが、量刑を重くする、最大の要因になりました」


 弁護士は、淡々と、そう説明した。


「今回の事件単体で見れば、動機や経緯を考慮すれば、また執行猶予がつく可能性も、ゼロではなかったと思います。ただ、執行猶予中の再犯は、原則として、実刑が科されるケースがほとんどなんです」


 その説明に、僕は、何も言い返せなかった。


     *


「なんで、僕を助けたことが、また、こんな結果に繋がるんだろう」


 弁護士との面談を終えた後、僕は、一人、そう呟いていた。


 一度目は、僕を誘拐から守るため。二度目は、僕の会社を、危険な組織から守るため。


 どちらも、僕を守るための行動だった。それなのに、その代償を、大和ばかりが、払い続けている。


     *


 その理不尽さに、僕は、押しつぶされそうになった。


「僕のせいだ……」


 何度も、そう呟いた。


 でも、その言葉を、大和本人に伝える機会すら、僕には与えられていなかった。


     *


「実刑二年、というのは、決して軽い判決ではありません」


 弁護士は、そう続けた。


「ただ、動機が、あなたや、あなたの会社を守るためだったこと、そして、対象が反社会的な組織だったことは、考慮された結果だと思います。もっと重い判決になっていても、おかしくはなかった」


 その言葉が、慰めになっているのか、僕には、正直、判断がつかなかった。


     *


「収監される刑務所が決まったら、また連絡します」


 祖父母から、そう伝えられた。


「面会については、まだ、本人の意思が変わっていないので……」


「分かりました。ありがとうございます」


 僕は、それだけ答えるのが、精一杯だった。


     *


 こうして、大和は、僕を、そして僕の未来を守るための行動の代償として、二年間、自由を失うことになった。


 その現実の重さを、僕は、これから、長い時間をかけて、噛み締めていくことになる。


 結婚式という、人生最大の幸せの直前に、僕は、最も大切な友人を、失いかけていた。

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