第60話 執行猶予中の代償
大和の裁判の日程が決まったという連絡を、僕は、下柳の祖父母から受けた。
「傍聴、しても構わないんでしょうか」
僕がそう尋ねると、祖父は、少し困ったように答えた。
「本人が、あなたに見られたくない、と言っているようで……」
その言葉に、僕は、胸を締め付けられる思いがした。
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結局、僕は、裁判を直接傍聴することは叶わなかった。
判決の内容を知ったのは、下柳の祖父母からの、電話越しの報告だった。
「実刑二年、との判決が出ました」
その言葉に、僕は、息を呑んだ。
「執行猶予期間中の、再度の傷害事件だったことが、重く見られたようです」
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僕は、後になって、詳しい事情を、弁護士から聞くことになった。
「以前の事件で、執行猶予がついていましたよね。その猶予期間中に、今回の事件を起こしてしまったことが、量刑を重くする、最大の要因になりました」
弁護士は、淡々と、そう説明した。
「今回の事件単体で見れば、動機や経緯を考慮すれば、また執行猶予がつく可能性も、ゼロではなかったと思います。ただ、執行猶予中の再犯は、原則として、実刑が科されるケースがほとんどなんです」
その説明に、僕は、何も言い返せなかった。
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「なんで、僕を助けたことが、また、こんな結果に繋がるんだろう」
弁護士との面談を終えた後、僕は、一人、そう呟いていた。
一度目は、僕を誘拐から守るため。二度目は、僕の会社を、危険な組織から守るため。
どちらも、僕を守るための行動だった。それなのに、その代償を、大和ばかりが、払い続けている。
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その理不尽さに、僕は、押しつぶされそうになった。
「僕のせいだ……」
何度も、そう呟いた。
でも、その言葉を、大和本人に伝える機会すら、僕には与えられていなかった。
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「実刑二年、というのは、決して軽い判決ではありません」
弁護士は、そう続けた。
「ただ、動機が、あなたや、あなたの会社を守るためだったこと、そして、対象が反社会的な組織だったことは、考慮された結果だと思います。もっと重い判決になっていても、おかしくはなかった」
その言葉が、慰めになっているのか、僕には、正直、判断がつかなかった。
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「収監される刑務所が決まったら、また連絡します」
祖父母から、そう伝えられた。
「面会については、まだ、本人の意思が変わっていないので……」
「分かりました。ありがとうございます」
僕は、それだけ答えるのが、精一杯だった。
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こうして、大和は、僕を、そして僕の未来を守るための行動の代償として、二年間、自由を失うことになった。
その現実の重さを、僕は、これから、長い時間をかけて、噛み締めていくことになる。
結婚式という、人生最大の幸せの直前に、僕は、最も大切な友人を、失いかけていた。




