第59話 拒まれた面会
翌日、僕は、仕事の予定を全て調整し、大和が留置されているという警察署へ向かった。
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「面会をお願いしたいのですが」
受付で、そう申し出ると、担当の警察官は、少し困ったような顔をした。
「お名前を伺ってもよろしいですか」
「武田晴信と申します。桜井さんとは、古い友人で」
警察官は、一度奥へと引っ込み、しばらくして戻ってきた。
「申し訳ございません。ご本人が、面会を希望されていないとのことで」
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その言葉に、僕は、耳を疑った。
「面会を、希望していない……?」
「はい。そのようにお伝えするようにと」
僕は、混乱した。なぜ、大和が、僕との面会を拒否するのか、その理由が、まるで見当がつかなかった。
「何か、伝言だけでも……」
「申し訳ございません。それも、難しいとのことです」
その返答に、僕は、なす術もなく、警察署を後にすることになった。
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帰り道、僕は、何度も、大和にLINEを送った。
『なんで、会ってくれないんだよ』
『何があったのか、教えてほしい』
『心配してるんだよ、本当に』
既読は、つかなかった。
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数日後、僕は、再び警察署を訪れた。それでも、結果は同じだった。
「申し訳ございません。ご本人の意思は、変わっていないようです」
その言葉を聞くたびに、僕は、言いようのないもどかしさに、押しつぶされそうになった。
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下柳の祖父母にも、連絡を取ってみた。
「私たちも、詳しいことは、あまり聞かせてもらえていないんです」
祖父は、申し訳なさそうに、そう言った。
「ただ、大和は、私たちにも、あまり詳しい経緯を話したがらなくて」
その言葉に、僕は、大和が、誰に対しても、頑なに口を閉ざしていることを知った。
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「今日も、会えなかったよ」
その夜、葵さんに、そうこぼした。
「そう……。心配だね」
葵さんは、短く、そう返してくれた。
それ以上、深く突っ込んで聞いてくることはなかった。まだ、詳しい事情を話していない相手に、それ以上を求めるのは、お互いにとって難しいことなのだと思う。
その言葉に、僕は、頭では納得しようとしながらも、心のどこかで、割り切れない思いを抱えていた。
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これは、後になって、大和自身の口から聞いた話だ。
「あの時、お前に会うのが、怖かったんだよ」
大和は、そう打ち明けた。
「お前の結婚式が近いのは、分かってた。そんな時期に、また俺のせいで、迷惑かけちまった。合わせる顔が、なかったんだよ」
その言葉に、僕は、当時感じていたもどかしさの理由が、ようやく分かった気がした。
大和は、僕を拒絶していたわけではなかった。ただ、自分自身の不甲斐なさに、向き合えずにいただけだったのだ。
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でも、当時の僕には、その事情を知る術はなかった。
ただ、理由の分からない拒絶に、戸惑い、もどかしさを募らせながら、日々を過ごすことしかできなかった。
大和との距離は、これまでで、最も深く、開いてしまっていた。




