↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第3部 すれ違いと危機編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/93

第58話 報せ

 結婚式の準備は、順調に進んでいた。


 式場の下見、招待状の準備、葵さんとの打ち合わせ。忙しくも、充実した日々が続いていた。


     *


 その電話がかかってきたのは、ある平日の昼下がりだった。


 見慣れない番号からの着信に、僕は、一瞬、迷いながらも電話に出た。


「もしもし……武田です」


「あ、突然すみません。桜井大和の祖父で、下柳と申します」


 その名前に、僕は、少し身構えた。


「ご無沙汰しております。大和くんに、何か……」


「それが……」


 電話越しの祖父の声は、明らかに動揺していた。


「大和が、逮捕されたと、連絡がありまして」


     *


「逮捕……?」


 僕は、自分の耳を疑った。


「詳しいことは、まだ、こちらにも、はっきりとは伝わってきていないんです。ただ、傷害事件を起こした、ということだけは」


 その言葉に、僕は、頭が真っ白になった。


「傷害事件……。大和くんが、ですか」


「ええ……。本当に、何が起きたのか、私たちにも、よく分からなくて」


     *


 電話を切った後、僕は、しばらく、その場に立ち尽くしていた。


 傷害事件。その言葉が、頭の中で、何度も繰り返された。


 あの、以前の事件――僕を助けようとして、大和が全てを失った、あの夜のことが、否応なく思い出された。


 ――まさか、また、同じようなことが。


 そう思うと、いてもたってもいられなくなった。


     *


 僕は、慌てて、大和のスマホに電話をかけた。


 でも、何度かけても、繋がらなかった。


 次に、LINEでメッセージを送った。


『大和、大丈夫? 連絡くれ』


 既読は、つかなかった。


     *


 その日の夜、葵さんに、事の次第を話した。


「友達が、ちょっとしたトラブルに巻き込まれたみたいなんだ」


 詳しい事情は、僕自身、まだ何も分かっていなかった。逮捕されたという事実を、そのまま伝えることも、この時は、なんとなく躊躇われた。


「トラブル……? 大丈夫なの?」


「うん、まだ、はっきりしたことは分からないんだけど。明日、様子を見に行こうと思ってる」


 葵さんは、少し心配そうな顔をした。


「そう……。何か、私にできることがあったら、言ってね」


 その控えめな気遣いに、僕は、少し救われる思いがした。


     *


 その夜、僕は、ほとんど眠れなかった。


 何が起きたのか。なぜ、大和が、また傷害事件を起こすことになったのか。


 様々な可能性が、頭の中を巡った。それでも、答えは、何一つ見えてこなかった。


     *


 結婚式という、人生最高の幸せを目前に控えたこの時期に、僕は、大切な友人が、再び窮地に立たされているという現実を、突きつけられていた。


 その意味を、僕はまだ、正確には理解できていなかった。


 ただ、言いようのない不安だけが、胸の中に、重く広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。