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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第3部 すれ違いと危機編

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第57話 決行

 これも、後になって、大和自身の口から聞いた話だ。


 あの日、大和は、健吾たちから得た情報を頼りに、組織の定例会合が開かれるという、都内のとあるレストランへ向かった。


     *


「表向きは、経営者同士の懇親会って体だったよ」


 大和は、そう説明した。


「個室を貸し切って、十人くらいが集まってた。その中に、トップと、主要な幹部がいるって情報だった」


 大和は、招待されたわけでも、関係者を装ったわけでもなかった。ただ、真正面から、その個室に踏み込んだのだという。


     *


「なんだ、お前は」


 突然の乱入者に、会合の参加者たちは、一斉に色めき立ったという。


「お前らが、狙ってる会社があるだろ」


 大和は、そう切り出した。


「『Suki』ってサービス、知ってるよな。あそこに、これ以上、手を出すな」


 その言葉に、会場の空気が、一変したのだという。


     *


「舐めた真似しやがって」


 その場にいた男の一人が、そう言って立ち上がった瞬間、大和は、動いた。


 詳しい経緯を、大和は、多くを語らなかった。ただ、「気づいたら、終わってた」という言葉だけを、僕に伝えた。


     *


 結果的に、その場にいた組織のトップと、主要な幹部数名が、大和によって、行動不能な状態にまで叩きのめされた。


 周到な準備をしていた分、動きに無駄はなかったのだという。それでも、多勢に無勢の状況で、大和自身も、決して無傷ではなかった。


「殴られた記憶は、あんまりねえんだよな」


 大和は、そう振り返った。


「無我夢中だったから」


     *


 騒ぎを聞きつけたレストランの従業員が、すぐに警察へ通報した。


 公共の場での大立ち回りだったため、大和は、その場で、駆けつけた警察官によって、現行犯逮捕されることになった。


「まあ、当然の結果だよな」


 大和は、そう自嘲気味に言った。


「証拠なんて、まともに揃えてたわけじゃねえし。表向きは、俺が一方的に、まっとうな会食の場を襲撃した、って形にしかならねえ」


     *


「後悔は、しなかったの?」


 僕が、そう尋ねると、大和は、少し間を置いてから答えた。


「連行されるパトカーの中で、考えたよ。これで、お前の会社は、少なくとも、あの組織からは守れたはずだって」


「なんで、そう言い切れたの?」


 僕が、率直にそう尋ねると、大和は、少し考えてから、説明してくれた。


「ああいう連中は、表向き、まっとうな会社を装って、じわじわ近づいてくるのが手口なんだと。健吾に、そう聞いてた」


「うん」


「でも、今回みたいに、公の場で、しかも警察沙汰になるくらい派手に事が明るみに出たら、話は別だ。組織の存在自体に、注目が集まる。俺の事件を調べれば、当然、あの会合に誰がいたのかも、警察に把握される」


 その説明に、僕は、頷いた。


「表の顔を使って、水面下で会社に食い込む。それが、あいつらのやり方だったんだろ。だったら、一番困るのは、目立つことだ。俺が暴れたことで、あの場にいた連中の身元も、多かれ少なかれ、警察に知られることになる。そんな状態で、お前の会社に手を出し続けるのは、リスクが高すぎる」


 大和は、そう締めくくった。


「だから、あそこで派手にやることに、意味があると思ったんだよ。ただ痛めつけるだけじゃなくて、あいつらの企みそのものを、白日の下に晒すことが、目的だった」


 その説明を聞いて、僕は、大和の行動が、単なる衝動的な暴力ではなく、**組織に「これ以上関われば割に合わない」と思わせるための、計算された一手**だったのだと、ようやく理解した。


     *


 こうして、大和は、僕の会社を、そして、僕の未来を、三度目の形で、守り抜いてくれていた。


 その事実を、当の僕は、この時、まだ、何一つ知らないままでいた。


 結婚式の準備に、幸せに包まれながら。

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