第56話 その頃、大和は
これも、全てが終わった後になって、大和自身の口から聞いた話だ。
僕がプロポーズの成功に浮かれていた、ちょうどその頃。大和は、静かに、計画の最終準備を進めていた。
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「会合の日程と場所、正確に掴めたのが、ちょうどあの時期だった」
大和は、そう振り返った。
「お前からプロポーズの報告来た時、正直、複雑な気持ちだったよ。お前の人生最高の瞬間に、俺は、こんなことしようとしてるんだなって」
その言葉に、僕は、何とも言えない気持ちになった。
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「怖くなかったの?」
僕が、率直にそう尋ねると、大和は、少し考えてから答えた。
「怖くなかった、って言ったら嘘になる。相手が、まともな連中じゃねえのは、分かってたし」
「それでも、決行したのは」
「お前を守るためには、他に手段が思いつかなかったからだよ」
その言葉は、あまりにも、シンプルだった。
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「実行の前の日、久しぶりに、オッサンの夢を見たんだ」
大和は、そう続けた。
「内容は、あんまり覚えてねえんだけど。ただ、オッサンが、笑ってた気がする」
その話を聞いて、僕は、胸が熱くなった。
「なんとなく、背中押された気がしてさ。俺がやろうとしてること、間違ってねえって、言われてる気がした」
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「健吾たちには、詳しい計画は、話さなかったの?」
僕がそう尋ねると、大和は、首を横に振った。
「あいつらは、情報集める手伝いをしてくれただけだ。実際に動くことは、話してねえ。巻き込みたくなかったからな」
その慎重さに、僕は、改めて、大和の不器用な優しさを感じた。
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「正直、生きて帰れるかどうかも、分かんねえと思ってた」
大和は、淡々と、そう語った。
「相手は、素人じゃねえ組織だ。返り討ちにされる可能性だって、十分にあった」
その言葉の重さに、僕は、言葉を失った。
彼は、自分の命を賭してまで、僕を守ろうとしていたのだ。
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「もし、俺が失敗して、それっきりになってたら」
大和は、少し自嘲気味に、そう続けた。
「お前には、何も伝わらないまま、終わってたんだろうな。それは、それでいいと思ってた。お前が、何も知らないまま、幸せでいてくれるなら、それで」
その言葉に、僕は、涙が込み上げるのを、堪えられなかった。
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決行の前夜、大和は、一人、アパートの一室で、静かに、その時を待っていたのだという。
誰にも打ち明けず、誰の助けも借りず。
自分の全てを賭けて、大切な友人を守るために。
その孤独な覚悟の重さを、僕が知るのは、まだ、もう少し先のことだった。




