第54話 単独行動
これも、全てが終わった後になって、大和自身の口から聞いた話だ。
噂が、次第に確信に変わっていく中で、大和は、一人で、より深く、その組織の実態を探り始めていた。
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「健吾たちの伝手を、正直、全部使ったよ」
大和は、そう振り返った。
「あいつらも、まさか俺が、そこまで本気で首突っ込むとは思ってなかったと思う。でも、頼み込んだら、色々教えてくれた」
健吾たちを通じて、大和は、その組織――表向きは投資会社やコンサルティング会社を装ったフロント企業の背後にいる、半グレ集団の存在を、次第に突き止めていった。
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「トップと、主要な幹部が、誰なのかも、大体分かってきた」
大和は、淡々と、そう説明した。
「定期的に、会合を開いてるって情報も掴んだ。表向きは、経営者同士の懇親会みたいな体で開かれてるらしいんだけどな」
その情報を集める過程で、大和は、何度も、危険な橋を渡っていたのだという。
「正直、俺が探ってること、向こうにバレてたら、もっと早く危ない目に遭ってたと思う。運が良かっただけだ」
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「警察に相談する、って選択肢は、考えなかったの?」
僕がそう尋ねると、大和は、少し複雑な表情を浮かべた。
「考えたよ、もちろん」
「じゃあ、なんで……」
「証拠が、はっきりしなかったんだよ」
大和は、そう説明した。
「表向きは、まっとうな会社を装ってる。警察に相談しても、まともに取り合ってもらえない可能性が高かった。それに、下手に動いて、向こうに勘づかれたら、お前が本格的に狙われる危険もあった」
その説明に、僕は、頷くしかなかった。
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「本人に、直接伝えるって選択肢も、なかったの?」
僕が、率直にそう聞くと、大和は、少し間を置いてから答えた。
「何度も考えた」
その声には、当時の葛藤が、滲んでいるようだった。
「でも、お前に伝えたところで、お前一人にできることなんて、限られてる。むしろ、変に警戒されて、相手に気づかれる可能性の方が高いと思った」
「それに」
大和は、少し言葉を切ってから、続けた。
「お前を、これ以上、危険な話に巻き込みたくなかったんだよ」
その一言に、僕は、胸が締め付けられる思いがした。
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こうして、大和は、たった一人で、組織のトップと主要な幹部を特定するところまで、計画を進めていった。
誰にも相談せず、誰の助けも借りずに。
その孤独な決断の重さを、僕が本当の意味で理解するのは、まだ、ずっと先のことだった。
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「あとは、決行するタイミングを、見計らうだけだった」
大和は、そう振り返った。
「その時期に、ちょうど、お前から、プロポーズの報告が来たんだよな」
その言葉に、僕は、あの日の記憶を、改めて思い返していた。
僕の人生における、最高の幸せの瞬間。その裏側で、大和は、たった一人で、命懸けの計画を進めていた。
その対比の残酷さを、僕は、今でも、時々思い出す。




