第53話 半グレの影
これも、後になって、大和自身の口から聞いた話だ。
あの頃、大和の周りで、ある噂が囁かれ始めていたのだという。
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「なあ、大和、お前の友達って、あの『Suki』ってやつ、作ってる人だろ」
健吾たちとの飲みの席で、そう切り出されたのだという。
「ああ、そうだけど。それがどうした」
「いや、ちょっと聞いた話なんだけどさ」
健吾は、声を潜めて続けた。
「あのサービス、結構な規模になってるだろ。そういうところに、良からぬ連中が、目ぇつけてるって話、聞いたことあってさ」
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「良からぬ連中って、どういうことだよ」
大和が、そう問い詰めると、健吾は、少し言い淀んでから答えた。
「詳しいことは、俺もよく分かんねえけど。フロント企業使って、儲かってる会社に、じわじわ入り込んでくる連中がいるんだと。表向きは、投資とか業務提携とか、まともそうな話で近づいてきて、気づいたら会社ごと乗っ取られてる、みたいな」
その話に、大和は、半信半疑だったという。
「お前の友達の会社が、そんな話に巻き込まれてるって噂、ちらっと聞いてさ。まあ、噂だから、本当かどうかは分かんねえけど」
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「最初は、正直、大袈裟な話だと思ってたんだよ」
大和は、そう振り返った。
「お前、忙しそうにしてたし、羽振りも良さそうだったからさ。まさか、そんな裏で、危ない橋渡ってるなんて、想像もしてなかった」
それでも、大和は、その噂が、頭から離れなかったのだという。
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「でも、なんとなく、引っかかってさ」
大和は、健吾を通じて、その筋に詳しい人間から、少しずつ情報を集め始めた。
「お前に直接聞くって選択肢も、なかったわけじゃねえんだよ」
大和は、そう説明した。
「でも、もし噂が本当だったとして、下手に騒ぎ立てたら、相手を警戒させるだけかもしれねえ。それに、もし噂が外れだったら、お前を無駄に不安にさせるだけだし」
その慎重さは、大和なりの気遣いだったのだと思う。
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調べていくうちに、噂は、次第に、具体性を帯びていった。
「後から分かったことだけどよ」
大和は、そう前置きしてから、当時調べていた内容を、僕に説明してくれた。
「お前の会社に、業務提携とか投資の話で近づいてきてた企業の中に、実態のよく分からない企業が、一社混じってたんだよ。登記上の住所行っても、もぬけの殻だったりしてな」
その話を、僕は、事件が全て終わった後になって、初めて聞かされることになる。当時の僕は、そんな調査が進められていることすら、知る由もなかった。
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この頃、大和は、一人で、静かに、危険の正体を探り始めていた。
僕には、何も知らせないまま。
その慎重さと不器用さが、この先、彼を、より大きな危険へと導いていくことになるとは、この時の大和自身も、まだ分かっていなかった。




