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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第3部 すれ違いと危機編

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第51話 交際のはじまり

 三度目の食事から、一週間ほどが経った頃。


 僕は、意を決して、高橋さんを、改めて食事に誘った。


「今日は、ちゃんと伝えたいことがあって」


 そう切り出すと、高橋さんは、少し緊張した面持ちで、僕を見つめた。


     *


「高橋さんのこと、その、一人の人として、大切に思うようになりました」


 柄にもなく、緊張で声が震えていた。


「もし良ければ、僕と、お付き合いしていただけませんか」


 言い終えると同時に、心臓が痛いくらいに鳴っていた。


     *


 高橋さんは、しばらく黙っていた。その沈黙が、僕には、とても長く感じられた。


「……はい」


 やがて、小さく、けれどはっきりとした声で、そう答えてくれた。


「私も、同じ気持ちでした」


 その言葉に、僕は、これまでの人生で味わったことのないような、温かい喜びに包まれた。


     *


 その夜、家に帰ってから、僕は、真っ先に大和に電話をかけた。


 この報告だけは、誰よりも先に、大和にしたいと思った。


     *


「もしもし、大和? 夜遅くにごめん」


「ん、どうした。珍しいな、こんな時間に」


「あの、実は、報告したいことがあって」


 僕は、少し照れくささを感じながら、事の経緯を話した。絵師として関わってくれている高橋さんのこと、少しずつ距離が縮まっていったこと、そして、今日、正式に交際を申し込んだこと。


     *


「へえ! ついに彼女できたのか、お前!」


 電話越しに聞こえてきた大和の声は、僕がよく知っている、明るい声だった。


「柄にもなく、緊張したよ、告白」


「まあ、お前、そういうの慣れてなさそうだもんな」


 からかうような口調に、僕は、思わず笑ってしまった。


     *


「良かったな、本当に」


 大和は、心からそう言ってくれているように聞こえた。


「お前、ずっと仕事一筋だったし。ちゃんと、そういう相手見つけられて、良かったよ」


 その言葉に、僕は、胸が熱くなった。


「ありがとう。今度、また詳しく話すよ」


「おう、楽しみにしてる」


     *


 電話を切った後、僕は、しばらく、その場に座り込んでいた。


 久しぶりに聞いた、以前と変わらない大和の明るい声。その声を聞けたことに、僕は、少なからず安堵していた。


 ――大和も、ちゃんと元気にやってるんだな。


 そう思い込んでいた。その声の裏に、どれほどの孤独が隠されていたのかを、僕はまだ、知る由もなかった。


     *


 こうして、僕は、高橋葵さんとの交際を、正式に始めることになった。


 新しい幸せの始まりと同時に、僕らは、それぞれの人生の分岐点に、また一歩、近づいていっていた。

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