第50話 三度の食事
一度目の食事は、当初の予定通り、次のキャンペーン案件についての打ち合わせという名目だった。
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「このアイコン案、すごくいいと思います」
僕が、資料を見ながらそう言うと、高橋さんは、少し照れくさそうに微笑んだ。
「良かったです。武田さんのイメージに合うか、結構悩んだので」
仕事の話は、思っていたよりも早く終わってしまった。それでも、僕らは、その後も、他愛のない話を続けた。
好きな作品の話、休日の過ごし方、これまでの人生のこと。話は尽きなかった。
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「実は、私、あんまり友達多い方じゃなくて」
高橋さんが、ふと、そんなことを漏らした。
「絵を描くのが好きで、家にこもりがちだったので。だから、Sukiみたいなサービス、すごく共感できたんです」
その言葉に、僕は、親近感を覚えた。
「僕も、似たようなものです。友達、片手で数えるくらいしかいなくて」
僕がそう言うと、高橋さんは、少し驚いたような顔をした。
「そうなんですか? こんなに事業を成功させてる方なのに」
「事業と、人付き合いの得意さは、また別問題みたいで」
僕が苦笑いすると、高橋さんも、つられて笑った。
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二度目の食事は、僕から誘った。
今度は、仕事の話という建前すら、ほとんど用意していなかった。
「今日は、特に案件の話はないんですけど……その、良ければ、また」
その誘い方は、我ながら、ぎこちなかったと思う。それでも、高橋さんは、快く応じてくれた。
「はい、喜んで」
その返事に、僕は、胸を撫で下ろした。
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二度目の食事では、より個人的な話が増えた。
「僕、父親を早くに亡くしてて。母子家庭で育ったんです」
僕がそう打ち明けると、高橋さんは、真剣な表情で耳を傾けてくれた。
「そうだったんですね……。大変でしたね」
「でも、色んな人に助けられて、今があります。特に、幼馴染の存在は大きくて」
僕は、大和のことを、少しだけ話した。詳しい事情までは話さなかったけれど、彼が、僕の人生において、どれほど大きな存在かを、伝えたつもりだった。
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三度目の食事の帰り道、駅までの道を、二人で並んで歩いていた。
「今日も、楽しかったです」
高橋さんが、そう言って、微笑んだ。
「僕も、楽しかったです」
その短いやり取りの中に、これまでとは違う、確かな何かが芽生えているのを、僕は感じていた。
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駅の改札の前で、僕は、思い切って、口を開いた。
「あの、また、こうして会っていただけたら嬉しいです。仕事関係なく」
その言葉に込めた意味を、高橋さんは、正確に受け取ってくれたようだった。
「はい……。私も、そう思ってました」
その返事に、僕は、胸の奥が温かくなるのを感じた。
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この三度の食事を通して、僕は、自分の中にある感情に、はっきりとした名前をつける準備が、できつつあった。
この人との時間を、これからも、大切にしていきたい。
その思いは、日を追うごとに、確かなものへと変わっていった。




