第44話 新しい仲間
これも、後になって、大和自身の口から聞いた話だ。
新しいジムでの生活に、少しずつ慣れ始めた頃、大和は、ジムの数人の男たちと、行動を共にするようになっていった。
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「大和、今日この後、暇か?」
練習後、そう声をかけてきたのは、ジムの中でも、少し素行の悪さが噂されている男だった。名前を、健吾といった。
「別に、暇だけど」
「じゃあ、飯でも行こうぜ。奢るからさ」
その誘いに、大和は、深く考えることもなく応じたのだという。
「あの頃は、とにかく、誰かと一緒にいたかったんだと思う」
後年、大和はそう振り返った。
「相手がどんな奴かなんて、正直、あんまり気にしてなかった。一人でいる時間が、それだけ、しんどかったんだよ」
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健吾たちのグループは、表向きは、ただのジム仲間の集まりだった。でも、その裏では、あまり褒められない副業に手を出している者も、少なくなかったのだという。
「最初は、そういうのに、直接関わってたわけじゃねえよ」
大和は、そう説明した。
「ただ、一緒に飯食ったり、遊んだりする中で、なんとなく、そういう世界の話を聞くようになっていった」
違法とまではいかなくとも、グレーな金の稼ぎ方。裏社会と繋がりのある人間の噂話。そういった話題が、日常会話の延長として、大和の耳に入るようになっていった。
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「よくねえって、分かってはいたんだよ」
大和は、苦笑しながら、そう言った。
「でも、あの頃の俺には、他に居場所がなかった。試合にも出られねえ、友達もいねえ、オッサンも、もういねえ。健吾たちといる時間だけが、なんとなく、自分の居場所みたいに感じられてた」
その告白を聞いたとき、僕は、胸が締め付けられる思いがした。
僕がもっと頻繁に連絡を取っていれば、この孤独を、少しでも埋められたのではないか。そんな後悔が、頭をよぎった。
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健吾たちは、大和に対して、直接的に何かを強要するようなことはなかったという。
「むしろ、あいつら、俺のこと結構気に入ってくれてたと思う。元東洋太平洋チャンピオンってことで、なんか一目置かれてた部分もあったし」
悪意のある関係ではなかった。ただ、その緩やかな繋がりが、後になって、大和の人生を、大きく揺るがすきっかけになっていくとは、当時の彼は、想像もしていなかった。
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この頃、僕と大和の連絡は、さらに間遠になっていた。
僕自身も、事業の拡大やメディア対応に追われ、大和の生活の変化に、深く目を向ける余裕を持てずにいた。
「元気にしてる?」
たまにかけた電話で、そう尋ねると、大和は、いつも通りの素っ気ない声で答えた。
「まあ、それなりに」
その「それなりに」の中身を、僕はまだ、知る由もなかった。




