第34話 メディアの中の自分
組織としての体制が整い始めた頃、僕は大学を卒業した。
最初のきっかけは、卒業間近に受けた、あるウェブメディアからの取材依頼だった。「学生が立ち上げ、海外発でバズった話題のSNS」という切り口で、僕自身にインタビューをしたいという話だった。まだ卒業前だったので、このときは間違いなく「学生」としての取材だった。
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「緊張しますね……」
初めての取材当日、僕はスタッフに何度もそう漏らしていた。
「大丈夫ですよ、いつも通り話せば」
同世代のスタッフが、笑いながら励ましてくれた。
結果的に、取材は無事に終わった。記事が公開されると、それがまた新たな話題を呼び、次の取材依頼へと繋がっていった。
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それから数ヶ月の間に、僕を取り巻く状況は、目まぐるしく変化していった。
卒業し、正式に「Suki」の運営に専念するようになってからは、ウェブメディアだけでなく、テレビの情報番組からも出演依頼が来るようになった。「若者に人気のSNSを立ち上げた、若手経営者」という肩書きで、僕は、少しずつ顔と名前を知られる存在になっていった。
「テレビに出るとか、僕には向いてないと思うんですけどね」
スタッフにそうこぼしながらも、事業を広めるためには、こうした露出も必要なのだと、自分に言い聞かせていた。
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多忙な日々の中で、僕と大和が顔を合わせる頻度は、以前よりもさらに減っていった。
「最近、テレビで見たぞ」
久しぶりにかかってきた電話で、大和がそう言った。
「え、見たの?」
「たまたまな。にしても、随分と喋れるようになったもんだな、お前」
からかうような口調だったけれど、そこに、以前ほどの気安さはなかった気がした。
「大和は、最近どう?」
「まあ、いつも通りだよ」
その返事は、以前よりも短く、素っ気なかった。忙しさにかまけて、僕は、その素っ気なさの理由を、深く考える余裕を持てずにいた。
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「今度、飯でも」
電話の最後に、僕はそう告げた。
「ああ、そのうちな」
その「そのうち」が、いつになるのか。当時の僕は、はっきりとした予定を決めることもせず、電話を切ってしまった。
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振り返れば、この頃から、僕らの間の連絡は、明らかに質を変えていった。
以前は、他愛のない用事でも、気軽に連絡を取り合っていた。それが、いつしか、お互いのスケジュールを気にしながら、遠慮がちに連絡を取るような関係に変わっていった。
悪気があったわけではない。それぞれが、それぞれの生活に追われる中で、自然とそうなっていっただけだった。
でも、その「自然な変化」の積み重ねが、後になって、埋めがたい距離になっていくとは、この時の僕は、まだ想像もしていなかった。




