第30話 小さな公開
半年近くの開発期間を経て、僕はようやく、試験運用という形でサービスを公開することにした。
名前は、何度も悩んだ末に、シンプルなものに決めた。趣味の話を、気兼ねなく語れる場所。そんな意味を込めて、「Suki」という名前をつけた。
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公開当日、僕は緊張しながら、パソコンの画面を見つめていた。
告知は、自分の使っているSNSのアカウントで、ひっそりと行っただけだった。大々的な宣伝をする伝手など、当然なかった。
最初の一時間、アクセス数はほとんど動かなかった。ユーザー登録者数は、一桁のまま。
「まあ、こんなもんだよな」
僕は、自分にそう言い聞かせた。期待していなかった、と言えば嘘になる。それでも、いきなり大きな反応が起きるとは、正直思っていなかった。
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それから数日間、地味な日々が続いた。
登録者数は、ゆっくりとしたペースで増えていった。とはいえ、それは数十人単位の話で、爆発的な広がりからは程遠かった。
それでも、僕にとっては、十分に嬉しい変化だった。
自分の作ったサービスに、見知らぬ誰かが登録してくれている。それだけで、これまでの苦労が報われたような気がした。
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「どうよ、あのSNS」
大和が、珍しく自分から聞いてきた。
「うん、ぼちぼち。登録者は、まだ全然少ないけど」
「そんなもんなんじゃねえの、最初は」
「そうだといいけど」
僕は、控えめに笑った。この時はまだ、後に訪れる急展開を、想像すらしていなかった。
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卒業研究としての評価も、悪くなかった。教授からは、実際にユーザーがついている点を評価され、上々の成績をもらうことができた。
「このまま、卒業したら終わりにするのか?」
教授にそう聞かれたとき、僕は、少し考えてから答えた。
「いえ……もう少し、続けてみようと思います」
その答えに、自分でも少し驚いていた。就職という当たり前の道を選ばず、この、まだ形になるかどうかも分からないサービスを、続けてみたい。
その決意が、いつの間にか、僕の中で固まりつつあった。
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夜、部屋の中で、僕は自分の作ったサービスの画面を、じっと眺めていた。
登録者は、まだ百人にも満たない。決して、成功と呼べる数字ではない。
それでも、この小さな灯火のようなものを、僕はもう少しだけ、大切に育ててみたいと思っていた。
大和が、格下相手の防衛戦を、地道にこなし続けているように。
僕もまた、この小さな一歩を、地道に積み重ねていくしかなかった。
その先に、何が待っているのか、この時の僕には、まだ知る由もなかった。




