第29話 手探りの開発
構想を固めてからの日々は、地道な作業の連続だった。
授業で習った知識だけでは、到底足りなかった。データベースの設計、サーバーの構築、セキュリティの基礎知識。必要なことは山ほどあって、そのほとんどを、独学で身につけていく必要があった。
深夜まで、参考書とパソコンの画面をにらめっこする日々。エラーの原因が分からず、何時間も同じ箇所で足踏みすることも、日常茶飯事だった。
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「なんか、げっそりしてんな」
久しぶりに顔を合わせた大和に、そう言われたことがあった。
「まあ、色々大変で」
「例のSNSってやつ、あれか」
「うん。全然、思うように進まなくて」
力なく笑うと、大和は、少し呆れたような顔をした。
「お前、そんな根詰めるタイプだったか?」
「自分でも、ちょっと驚いてる」
本当にその通りだった。今まで、これほど何かに没頭した経験はなかった。誰に評価されるわけでもない、地味な作業の繰り返し。それでも、不思議と苦痛ではなかった。
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「見せてみろよ、そのSNSってやつ」
ある日、大和がそう言い出した。
「見せても、大和には多分、あんまり分かんないと思うけど」
「いいから」
パソコンの画面を見せると、大和は、興味なさそうな顔をしながらも、画面をじっと眺めていた。
「正直、俺にはよく分かんねえけど」
しばらくして、大和はそう言った。
「でも、お前が必死こいてるのは、伝わってくる」
その一言に、僕は少し驚いた。
「大和が、そういうこと言うの、珍しいね」
「うるせえな」
照れくさそうに視線を逸らしながらも、大和は、続けた。
「オッサンがよく言ってただろ。学ぶ力がどうとか。お前が今やってること、まさにそれなんじゃねえの」
その言葉に、僕は胸が熱くなるのを感じた。
大和なりに、僕のやっていることを、理解しようとしてくれていたのだと、その時初めて実感した。
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「行き詰まったら、いつでも愚痴りに来いよ」
大和は、そう付け加えた。
「大和に話しても、技術的なアドバイスはもらえなさそうだけど」
「そりゃそうだろ。俺にできるのは、話聞くことくらいだよ」
その素っ気ない優しさに、僕は救われる思いがした。
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それからも、開発は難航を極めた。何度も心が折れそうになった。
それでも、諦めなかったのは、大和のあの一言があったからかもしれない。
「お前が必死こいてるのは、伝わってくる」
その言葉を、僕は何度も、心の中で反芻した。
互いに、優先順位が変わり、会う頻度は減っていた。それでも、根っこの部分では、まだ確かに繋がっている。そう信じられる出来事だった。
この時の僕は、まだ知らなかった。
この開発の先に、想像もしていなかった大きな転機が待っていることを。




