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何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第2部 それぞれの飛躍と挫折編

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第22話 埋まらないもの

 会長に言われたことが、頭の片隅にずっと引っかかっていた。


 ――たまにでいいから、あいつのこと遊びにでも誘ってやってくれよ。


 でも、いざ連絡しようとすると、指が止まった。以前は当たり前にできていたことのはずなのに、今は妙に緊張してしまう。


 どれくらいの頻度で誘えばいいのか。何を話せばいいのか。そんなことを迷うほど、僕らの間には、いつの間にか、薄い膜のようなものができていた。


     *


『今度の日曜、暇? 久しぶりに飯でも』


 迷った末に送ったメッセージに、返事が来たのは、その日の夜遅くだった。


『別に、いいけど』


 素っ気ない返信だったけれど、断られなかったことに、僕は少しほっとしていた。


     *


 当日、待ち合わせた駅前で、大和はどこか居心地悪そうに立っていた。


「久しぶりだな」


「うん、久しぶり」


 二人とも、次に何を話せばいいのか、少し分からなくなっていた。以前なら、こんな沈黙は生まれなかったはずなのに。


 結局、近くのラーメン屋に入り、他愛のない話をぽつぽつと交わした。大学の話、ジムの話。それでも、以前のような、途切れることのない会話のリズムは、なかなか戻ってこなかった。


     *


「なあ」


 食事も終わりかけた頃、大和がぽつりと切り出した。


「最近、あんまり連絡取ってなかったよな、俺ら」


「うん……そうだね」


「別に、お前のこと避けてたわけじゃねえよ。ただ、なんか、うまく誘えなくなってたっていうか」


 その言葉に、僕は頷いた。同じことを、僕自身も感じていたからだ。


「僕も、同じだったよ。前は、もっと自然に会えてた気がするのに」


 大和は、しばらく黙って、コップの水を見つめていた。


「……オッサンがいたから、ちょうどよかったのかもな、俺らって」


 その一言に、僕は少し驚いた。


「どういう意味?」


「あの人がいる時は、勝手に会話が回ってっただろ。俺とお前、直接何か話すってより、オッサンを挟んで喋ってたっていうか」


 言われてみれば、その通りだった。航さんがいる場では、彼が話題を振り、軽口を叩き、僕らはその流れに乗るような形で会話をしていた。


「あの人がいなくなって、俺ら、二人だけでどう関わればいいのか、分かんなくなってるのかもな」


 大和の言葉に、僕は妙に納得してしまった。


 航さんは、単なる仲介者ではなかったはずだ。それでも、無意識のうちに、僕らの関係の中心に、彼という存在があったことは、否定できなかった。


     *


「でも」


 大和が、少し照れくさそうに続けた。


「別に、これで終わりにするつもりはねえから。ただ、前と同じようにはいかねえだけで」


「うん。僕もそう思う」


 完全に元通りになったわけではなかった。それでも、その日、僕らは少しだけ、以前の距離感を取り戻せた気がした。


     *


 別れ際、大和が言った。


「また誘えよ、たまには」


「うん、また誘うよ」


 その約束は、以前ほど自然なものではなかったかもしれない。それでも、意識して繋ぎとめようとする意志が、そこには確かにあった。


 航さんという存在が埋めてくれていた場所を、僕らはまだ、完全には埋め切れずにいた。


 それでも、少しずつ、僕らなりのやり方で、その空白と向き合い始めていた。

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