表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何があっても、友でいてくれ  作者: 中原九尾
第1部 いじめと出会い編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/21

第14話 変わらない日常

 大学生活は、思っていたよりも静かに過ぎていった。


 サークルには入らなかった。誘われなかったわけではないけれど、なんとなく気が乗らなかった。人付き合いが得意ではない性分は、大学生になったからといって、そう簡単には変わらない。


 空きコマや休日は、大抵、大和のアパートで過ごしていた。


「また来たのかよ」


「暇だったから」


 そんなやり取りが、もう挨拶のようになっていた。口ではそう言いながら、大和が本気で僕を追い返すことは一度もなかった。


     *


 大和の生活も、相変わらずだった。ジムでの練習、アルバイト、そして時々の試合。デビュー戦の勢いのまま、二戦目、三戦目と、着実に白星を重ねていた。


「次の相手、どんな奴なの?」


「知らねえよ、まだ見たことねえし」


 試合前の会話は、いつもこんな調子だった。緊張しているはずなのに、大和は決してそれを表に出さなかった。


「見に行くよ、次も」


「別に、来なくてもいいけど」


 そう言いながらも、僕が観戦に来ることを、大和は当たり前のように受け入れていた。


     *


 航さんも、変わらず月に何度かアパートを訪れていた。


「お、また武田くんいるのか。お前ら、家族かよ」


「オッサンには言われたくねえよ。誰よりも頻繁に来てるくせに」


「俺は保護者だからな。武田くんとは違う」


 そんな軽口を叩き合う二人を眺めるのが、僕はいつの間にか好きになっていた。


 三人で近所のラーメン屋に行ったり、くだらないテレビ番組の話で盛り上がったり。特別なことは何もない、ただの日常だった。


 でも、その「何もない日常」こそが、当時の僕にとって、何より大切なものだった。


     *


「そういえば、大学どうだ。友達できたか?」


 ある日、航さんにそう聞かれて、僕は少し言葉に詰まった。


「あんまり……。サークルにも入ってないし」


「まあ、無理して作るもんでもないだろ。お前には、ここに大和がいるんだから」


 航さんは、それをごく当たり前のことのように言った。


「オッサン、俺を武田の友達要員みたいに言うなよ」


「事実だろ。お前だって、こいつがいなかったら、もっとつまんない大学生活送ってたと思うぞ、大学行ってないけど」


「意味わかんねえこと言うなよ」


 そんな軽口の応酬を聞きながら、僕は笑っていた。


     *


 振り返ってみれば、あの頃の日々は、本当に穏やかだった。


 大和は試合を重ねるたびに強くなっていき、僕は大学の勉強にも次第に慣れていった。航さんは、変わらず飄々とした調子で、僕らの生活の傍らにいてくれた。


 このまま、何も変わらない日々が続いていくのだと、僕は漠然とそう思っていた。


 サークルにも入らず、特別親しい友人も作らず、ただ大和のアパートに通う。傍から見れば、あまり褒められた大学生活ではなかったのかもしれない。


 それでも、僕にとっては、かけがえのない時間だった。


 あの穏やかな日々の記憶を、僕は今でも、時々思い出す。


 まだ、何も知らなかった頃の記憶として。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ