98.七つのジョブ
数日後の進路に関する授業では、希望するジョブごとに教室が分かれることになった。
私はマージ希望なので、前と同じくメジェラ先生の授業を受ける。
肝心の授業では、冒険者のジョブについて詳しく学んだ。
何気に、これまで詳しいことをあまり知らなかったことだった。
「君たちは冒険者を目指す者だ。ならば、当然ジョブについては理解しておかねばならん。ジョブが全部で何種類あるのか、それぞれが何を得意とし何を苦手としているのか……そういったことを、覚えておく必要がある」
先生はそう言って、黒板にジョブの名称を一つずつ書き始めた。
この先生は書くのが速く、それでいてちゃんと読める字を書くので、板書は読みやすい。
で、黒板に書かれたジョブの名称なのだが、全部で七つ。
ファイター、タンク、レンジャー、マージ、ヒーラー、シールダー、エンチャンター。
それぞれの特徴をこれから解説する、まずは教科書の十三ページを開け、と先生は言った。
「まずファイターとタンク、レンジャーは物理職に。それ以外は魔法職に分類される。今ここにいるのはマージを目指す者ばかりだが、だからといって知らなくてよいことではない。覚えておくように」
その後、先生は各ジョブについて詳しく説明してくれた。
といっても覚え方は単純で、基本的には攻撃役、盾役、サポート役、回復役、に分かれている……と覚えればよい。
細かい点として、タンクは盾などを駆使する物理職の盾役、シールダーは味方の防御力を上げたり、シールドと呼ばれる魔法障壁を張る魔法職の盾役。
レンジャーとエンチャンターは、どちらも味方にバフをかけたり、後方から攻撃をしたり、仕掛けを解いたりといったことをするサポート役だ。
唯一ヒーラーだけは物理職に該当するジョブがないが、レンジャーやエンチャンターでも回復はできる。
ただしその回復量は決して高くなく、基本的には回復はやはりヒーラーが行うものだという。
「これらのジョブは、どれも代えの利かない能力を持っている。たとえばファイターとマージはどちらも攻撃役だが、物理が効かない相手にはファイターは無力だ。逆に、魔法がろくに効かない相手にはマージは何もできん」
それは確かにそうだ。
一応私たちは武器を持ち、それで戦えるようにしてはいるが、それでも本職の物理職と比べると見劣りするだろう。
「どのジョブになるにしても、最低限求められる能力のボーダーラインがある。それをクリアできなければ、希望するジョブにはなれん」
先生は教卓に両手をつき、私たちみんなの顔を見回した。
「この授業では、諸君がマージとして認められる実力を身に着けられるよう指導する。たとえ授業を聞いていなくとも、卒業は可能だが……その後どうなるかはわからないぞ?ハリル!」
ハリル……後ろの方の席に座っていた男子生徒は、はっとしたように先生を見た。
「冒険者の世界は、決して気楽なものではない。少なくとも、授業もまともに聞かずに落書きを楽しんでいるような者には、到底生き残ることのできない世界だ」
どうやら、ノートに落書きをしていたようだ。
先生は手を彼に向け、体を浮かび上がらせて背中を天井に貼り付けた。
彼は小さく悲鳴を上げ、先生を見た。
「もうすぐジョブの説明が終わる。それまでそこで受講していろ」
メジェラ先生は、常に冷淡だ……声も表情も。
この先生、やはり厳しい。
過去に、少なくとも一度は人生を最期まで生き、死後に生まれ変わった経験を持っているからだろうか。
何気に母と同級生というすごい人だが、私は二人が直接話しているのを見たことはない。
いつか、見る機会が来るのかもしれないが。




