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灼炎の転生魔女 〜異世界で始めるいじめ復讐〜  作者: 明鏡止水
3章 闇と炎は何を紡ぐ

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89.幸せな食卓

 終業式の日に、全員がゼギタリス薬を一瓶もらった。

あらゆる毒を治療することができるすごい薬……なのだが、それだけ聞くといくつかの属性に存在する解毒の魔法と被る。


しかし、あちらはそもそも冒険中や戦闘中に使用することを想定されたもので、直接体力を奪うゲーム的な毒、蜘蛛や蛇などの毒にのみ効果がある。


 ゼギタリス薬は、自然毒による食中毒の時や毒素を作り出す細菌が原因の時にも使えるので、日常生活においてはむしろこちらの方が汎用性がある。


でも、素材となるゼギタリスが危険な植物なのもあり、流通量は決して多くはない。

それだけに、今回こうして薬をもらえたのはありがたい。




 冬休みに入ってすぐ、こんなことがあった。

その日の夜、私は夕飯を作る母の手伝いをしていた。


「アリア、冷蔵庫からマルテロを出してくれる?」


「はーい」


マルテロとは、マルティアという魚の身を加工した食材で、見た目も味もネギトロによく似ている。

私は前世でネギトロが好きだったので、当然こちらも好きだ。


また、これは母の好物でもある。

大して高価なものでもないので、うちでは定期的に食卓に並ぶ食材なのである。


 で、そのマルテロは冷蔵庫を開けてすぐ目についた白い皿に入っていた。

それを出して母のところに持っていくと、「もうすることはないから、座ってなさい」と言われた。




 席についてしばらくすると、いくつかの食材が一つの大皿に盛り付けられて出てきた。

もちろん、その中にはマルテロもある。


食べてみてまず一言……美味しい。

心なしか、いつも以上にもちもちしている。

母もそれは感じたらしく、母娘で喜んで食べ進め、当然のように完食した。


 片付けの際もまた、母と私で皿を洗った。

前世とは違い、「ケイロン」という木の実を石鹸の代わりにして洗うのだが、この実から出る泡は手に優しく、手荒れなどを起こす心配がないという優れものだ。


実際に食器を洗うのには、同じくケイロンの木の幹を使う。

木の皮を剥くと現れるスポンジ状の部分を切り取ったものであり、見た目も手触りもスポンジによく似ている。ただし、スポンジほど柔らかくはない。


やはりしばらく使うとボロボロになり、交換が必要になるが、安価なものなので費用も大してかからない。


 母と話しながら、洗い物をする。

ごくありふれた母娘の日常だが、私にとっては十分過ぎるほどにかけがえのない経験だ。

つい忘れてしまうが、このような経験ができること自体が幸せなことなのだ。


ただ、その幸せは長くは続かなかったのだが──。

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