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灼炎の転生魔女 〜異世界で始めるいじめ復讐〜  作者: 明鏡止水
3章 闇と炎は何を紡ぐ

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85/105

85.死より重い罰

「な、何をする気だ……!?」


 マッドはいよいよ腰を抜かし、後ろに倒れた。


「何だっていいでしょ?どんなことをされても構わないって……そういう覚悟があったんだよね?」


私は杖の先に炎を灯す。

ただし、これはいつものような赤い炎ではない。青色の見えづらい炎だ。


「これは普通の炎じゃない。『マインパルス』、精神を燃やす魔法。肉体には一切傷をつけずに苦痛を与えることができる」


 杖をマッチのように上に向けたまま、彼に近づく。


「本来は子供のしつけとかに使われる魔法なんだけど、性質上拷問や虐待に使われることもある。もちろん、いじめにも使われるね」


「……正気か!?それじゃ、お前は昔の俺と同じことをすることになるぞ!」


「それはそうかもね。でも、そもそも最初にやってきたのはそっちでしょ?先に私をいじめた以上、同じようなことをされても文句は言えないはずよ」


 自分でもわかるくらい、冷酷な声が出ていた。

杖の先に灯る炎は小さいが、私の中に燃える炎は大きい。


わずかに美沙たちが私の名前を呼んだ気がしたが、もはや関係のないこと。

今はただ、こいつへの復讐を完遂するだけだ。


 炎を放った途端、マッドは低い唸り声を上げた。

それ以外の音は一切聞こえず、外見には何も変化がない──だがそれこそ、この魔法の真価であり恐ろしさだ。


「精神を燃やす魔法」の名前の通り、精神……正確には、魂そのものに炎で焼かれるような苦痛を与える。

そして魂は肉体とは別物のため、肉体へのダメージは一切なく、死ぬこともない。


結果として、本人は間違いなく痛いし苦しいが、その体には一切傷がつかず、健康なままということになる。


 こんなものが子供のしつけに使われる……なんて恐ろしい話だが、幸いにも私はやられたことはない。


ただ、確かに罰にはなるだろう。

実際に体を焼かれるわけではないにせよ、本人の意識が味わう苦痛はそれと何ら変わりないものであるから。


「ああっ……!あ……っ!ううっ……!」


 マッドは床に倒れ、胸や腹を押さえてはすぐに別の場所を押さえた。

全身にくまなく苦痛を感じているのだろう。


見ていられないと思ったのか、ノエルは目を覆っている。

一方でリーネとユエは、それぞれ浮かべている表情は違えど、苦しむ彼をしかと見ていた。


 やがて彼は地面を這い、私に手を伸ばし、かすれた声で懇願してきた。


「も……もう、やめ……じゃなきゃ、殺し……」


あまりの苦痛に、「いっそ殺してくれ」と言ってきたか。

だが、私はそんなつもりはない。


「殺してくれ、って言いたいの?ならあいにくだけど、私はそんなことはしない」


彼は、絶望的な表情をした。


「でも……これ以上いたぶるのもかわいそうだしね。わかった、やめてあげる」


 魔法を解除すると、悠人は力尽きたように床に伏し、動かなくなった。

無論、死んではいないだろうが。


「これでわかったでしょ?あの時、私がどれだけ苦しい思いをしてたか。誰かをいじめた代償が、どれだけ重いものか」


私はしゃがみこみ、顔を上げようともしない彼を見つめて言った。


「私と芽依は、お前たちに命を奪われた。でもそれについては、同じことをしようとは思わない……反省してるって言ってたし」


 そこで彼は顔を上げた。

苦しんでいるようで、悲しげに笑っているようで……何とも言えない表情だった。


「お前も奈々と同じだ。死ぬんじゃなくて、生きろ。生きて、一生かけて償いをしろ。私達を支え、隣に立つ存在として……生き続けろ」


悠人は涙をこぼした。

それが殺されずに済んだという喜びか、どうして生かすんだという悲しい笑いか、はたまた味わった苦痛から出た目の反応か、私にはわからなかった。



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