84.向き合わなかった代償
「アリア……」
「アリア……!」
美沙たちが一心に視線を向けてくる中、私はマッドを見つめる。
「あんた……本当に悠人なの?」
「確信を持てない、とでも言うのか?」
「いいえ。私が聞きたいのは、あんたは『マッド』なのか、『悠人』なのか、どっちなの?ってこと」
彼は、ふーむ……と唸った。
「難しい質問だな。けどまあ……強いて言うなら、両方だ。お前だってそうだろう?」
それには文句を言えなかった。
私は三春だが、同時にアリアでもある。
前世を背負い、復讐のために生きる人間であり、今世を自分らしく、楽しく生きようとしている魔女でもある。
「そうだね。で?あんたは私に復讐される覚悟があるんだっけ?」
「……ある。さっきも言ったが、当然の権利だ。俺がお前でも、同じことをしただろうさ」
おかしいことを言ってはいない。でも、悠人がそれを言っていると思うとなんか腹が立つ。
「ふーん……」
私は、彼の目を見て──確かにどことなくあいつの面影があるな、と感じた。
いや、気のせいかもしれないが。
「あんたは反省してるって言ってたけど、本当なの?」
すると、彼は途端に饒舌に喋りだした。
「もちろんだ!それは断言できる。俺は転生してからずっと、前世のことを考えてた。そしてそのたびに、三春たちに申し訳ないことをした、自分は悪人だって……罪悪感に苛まれてた!だから、仕返しされたって……!」
「仕方ない、って?」
マッドは口を閉じ、頷いた。
「それなら、どうして私を狙ったの?素直に会いに来て、謝ればよかったのに」
「そりゃ、そのつもりでいたさ。でも……お前が怖かったんだ。気づくのが遅かったし、先に奈々たちがお前に復讐されたって聞いてたから……何をされるかって、怖かった」
「じゃあ、さっきの言葉は嘘だったの?『私が何をしようと、文句は言わない』っていうのは」
「嘘じゃない!今言ったのは、あくまで前はそうだったってことだ。今はもちろん、そう思ってるさ!」
「なら、どうして私を殺そうとしたの?学院から追い出そうとしたりしたの?」
マッドは何も言わなくなった。
もう、ごまかせなくなったのだろうか。
私は、逃がさないとばかりに追及する。
「怖かったって言うけど、本当に反省してるなら……申し訳ないと思ってるなら、それを乗り越えろよ。自分の気持ちに負けないで、過去に向き合えよ。私だったらそうするよ?」
私の気迫に臆したのか、彼は半歩後ろに下がった。
「あんたが反省してるって言っても、信じられない。いや……仮にそうだったとしても、過去のことを許すとは言ってない」
すると、彼は口を開けて細かく震えた。
「それはわかってる。だから、お前に何をされたって構わない。俺は、それだけのことをしたんだ……」
「そう。あんたは許されないことをした。だから、相応の報いを受けるべき」
芽依が「そうよ!」と口を挟んできた。
彼女もまた、悠人を恨んでいる──私と同等か、それ以上に。
「あんたは確か、みんなの手助けをしてたよね?自分から進んではいじめてこなかったけど」
「あ、ああ」
「けど、だからって許されるわけじゃないし、罪が軽くなるわけでもない……わかってるよね?」
悠人が頷いてすぐ、私は杖を出す。
「お前が私を恐れたように、私達だってお前たちが怖かった。お前は私達の心を殺そうとした。だから、私も同じことをする──」




