82.露見と内通者
図書館での一件があってから、私は生徒たちの杖を注意して見ていた……のだが、それも長くは続かなかった。
もちろん、何の理由もなしにやめたのではない。
生活魔法の授業の時に、たまたま見つけたのだ……カルディーンの杖を持つ、紫髪の生徒を。
それが誰だったのかは、もはや言うまでもないがマッドだ。
ただ一応、他に候補がいないかどうかは調べてみた。
雨上がりの昼休み、誰もいない中庭で「葉っぱの占い」をやってみた。
これは「水面に異なる大きさの葉っぱを2枚浮かべる」という準備をして行う簡易的な占いなのだが、その結果に嘘はない。
「私のクラスに、カルディーンの杖を使う闇の天賦を持つ生徒は、マッド以外にいる?」
そう訪ねて杖を水たまりの水面に向けると、小さい方の葉っぱがくるくるまわって水中に沈んだ。
この占いは俗にいう「○×占い」であり、これは「いいえ」「×」を意味する挙動である。
この際、ついでにいくつかの質問もしてみた。
「この前、図書館で私を襲ってきた本に魔法をかけたのはマッド?」
「マッドは、私を学院から排除しようとしてる?」
それらの質問には、大きい方の葉っぱが回転してから沈んだ。
これはさっきの逆、「はい」を意味する動きだ。
「……やっぱり、そうなんだ」
私は杖の先端で水たまりの周りをくるっとなぞって一周し、改めて水面に向けて「占い、終わり」と詠唱した。
これにより、水たまりもそこに浮かべた葉っぱも普通のものに戻る。そこで誰かが占いをしたことなど、わからなくなるのだ。
その日の放課後、私は廊下で恐ろしいものを目にした。
なんと、ニールがマッドに詰め寄られていたのだ。
まだ手を出されてはいないが、明らかにヤバそうな雰囲気だ。
一応、柱の陰に隠れて会話を聞いてみた。
「お前を信じたのが悪かったみたいだな。お前は結局、あいつのスパイだったんだろ?」
「違う!僕は……みんなのためを思うからこんなことをしたんだ」
「へえ?そりゃどういうわけだ?」
「こんなこと、絶対に間違ってる。あの子に思うことがあるなら、直接面と向かって言って、清算するべきだと思う。こんなことをしても、何も変わらないし誰も救われない!」
「それはそうだな。少なくともお前は救われない……」
不穏なセリフの直後、ニールの焦る声が聞こえた。
「こんなことするつもりなかったが、あの女より先に消えてもらおう……この学院からな」
私は思わず飛び出し、杖を構えて小声で「エディクリム」、発火魔法を唱えた。
それでマッドの服に火をつけ、彼が驚き慌てている間にニールが逃げ出したのを確認し、自分も場を後にした。
今回は、あくまでニールを救うために魔法を使っただけだ。
マッドは……まあこのままにしてはおけないが、それでも今は何もしないでおく。
彼が転生者であれ、そうでなかれ決着はつける。もうすぐ近いうちに、必ず。




