65.それぞれの居場所
それからというもの、ニールは定期的に私に声をかけてくるようになった。
何なら、ノエルたちと一緒にいる時でもお構いなく突っ込んでくるほどだ。
ノエルとライドは、最初はそんな彼を少々嫌がっているようだったが、やがてその性格を受け入れたのか、私と同じように仲良くするようになっていった。
授業を受ける時も、ニールは優先して私たちの近くに座ってきた。
とはいえ、授業中に堂々と話しているとさすがに怒られるので、時折小声で声をかけてくる。
それでも見つかる時は見つかって、怒られるのだが。
「ねえ、そろそろやめない?」
授業終わりに、ノエルが言った。
「え?何を?」
「授業の時、近くに座るのをよ」
「どうして?」
「近くに座ると、どうしても話したくなって……怒られるでしょ?」
正直、私もノエルと同じことを思っていた。
もちろん彼と話すのは楽しいが、授業は授業をしっかり受けなければ。
「うーん……まあ、それもそっか。わかった、これからは気をつけるよ」
この手の話は、場合によっては相手を傷つけてしまうのではないか、とつい不安になってしまう。
自分はそんなに大したことだと思っていなくても、相手はそうだとは限らない。
そして、そのような日々のすれ違いやちいさな不満が積み重なっていった結果、喧嘩やいじめが起きることがある……というものだと、私は思う。
今回は、ニールはそんなに嫌だと思ってはいなかったように見えるが……どうだろうか。
いくら親しくなりつつある人でも、警戒せずにはいられない。
その後、ニールは私たちとあまり絡まなくなり、それまでいつもつるんでいた生徒たちとよく話すようになった。
いずれもスクールカースト上位の子たちで、闇魔法の天賦を持つ。
内訳は男子が三人、女子が二人。
……前世で、私をいじめてきたグループも五人だった。
あの時は、男子は一人しかいなかったが。
とはいえ、彼らのやりとりを見ていた限り、どうもニールは少々浮いているように思える。
もちろん明確に、ではないのだが……何となくそんな気がする。
というか、男子が三人で女子が二人なら、普通に考えて男子側に一人余りが出る可能性は十分にある。
もしかしたら、その一人が……いや、これ以上はやめておこう。
一方で私たちの方はと言うと、ニールが近くに来なくなってからは純粋に勉強に専念できている。
もちろん彼を悪く言うつもりはないが、邪魔が入らなくなったことで授業をしっかりと聞けている。
やはり学生は、ちゃんと授業を受けて勉学に励むのが一番だ。
特に私は灼炎の女皇、世界最強と謳われる炎の魔女の娘。成績が悪ければ周りからなめられるし、母を失望させてしまう。
そんな事にならないためにも、私はひたすらに魔法の勉強に励む。
前世の授業よりずっと楽しいし、これも将来母のような魔女になるためだと思うと、自然とやる気が出てくる。
私は鈴木三春。
だが、同時に──炎の大魔女の娘、アリア・ベルナードでもあるのだ。




