58.友人としての復讐
リーネと和解してからは、月日が経つのがあっという間だった。
今まで通り魔法の勉強と訓練をし、時には探索の訓練なんかもした。
基本的には楽しかったが、十二月の初頭にやった「雪中探索訓練」は、楽しいというより厳しかった。
これは四人で一組のグループをつくり、雪山を忠実に再現した空間で特定の任務をこなすという訓練なのだが、想像以上に厳しいものだった。
雪が多くて進みづらいのもあるが、それよりも問題なのが寒さ。
訓練開始前に「標高二千メートル、気温マイナス十度、風速十五メートル」という条件だとは聞いていたが、これがとんでもなく厳しいものだった。
寒さ対策には「カルネージ」、保温の炎魔法が必須だが、今回のグループは私の他にユエとリーネとマシュルであり、私しか使える者がいない。
しかもこの魔法は制限時間があり、環境にもよるが今回の訓練では三十分で切れてしまう。
つまり、私はみんなのために定期的に魔力を消費し続けなければならないのだ。
道中で雪や氷を溶かして道を切り開くこともできるが、あまりそれをやると魔力が切れる。
何しろ今回は、途中で魔力回復薬を使用することが禁止されているのだ。
冒険者になれば、寒さの厳しい場所を探索することもある。時には、さらに過酷な環境での探索を強いられることもある……という触れ込みでの訓練ではあるが、そんな条件まで入れなくてもいい気がする。
この訓練を通じて知ったのは、ユエたちのように氷の天賦を持つ魔法使いは寒さに耐性があり、凍傷にもならないということ。
ただし寒さを感じないわけではなく、体が悴んだりは当然のようにするため、寒さ対策が不要になるわけではない。
逆に私のような炎の天賦を持つ魔法使いは、暑さや火傷に耐性があるらしい。
言われてみれば、転生してから火傷をしたことがない。
母にも何も説明されていなかったが、そうなのだろうか。
そんなこんなで月日は経っていき、年が明けた。
それから間もないある雪の日、私はノエルと遊んでいた。
今日はユエとリーネもいる。
……つまるところ、前世からの因縁があるメンバーで集まっているのだ。
ノエルこと美沙は、リーネの正体が奈々だと知った時は当然のごとく驚いていた。
そして、彼女も自身と同様に私たちの復讐を受けたことを知り、何とも言えない反応をしていた。
「そっか……辛かったね。いや、私たちがこんなこと言える立場じゃないんだけど」
そのセリフを聞いてユエの反応が心配になったが、幸いにもそこまで反応してはいないようだった。
ただその代わり、「美沙は……反省してるの?」とだけ言った。
「もちろんしてるよ。三春にも芽依にも、悪いことしたと思ってる。いくら謝っても、許されることじゃないけど……」
以前の芽依なら、この程度の謝罪ではとても許したりなどしなかっただろうが、今回はさほど過敏に反応しなかった。
先に奈々の件があったのもあるし、既に以前ノエルに会い、謝罪を受けていたのもあるだろうが。
「まあ、許しはしないけど……奈々の件もあるしね。そんなにあんたを憎んでも仕方ない」
ただ、とユエは続けた。
「本当に申し訳ないと思ってるなら、行動で示して。今後、私や三春が助けを必要としている時……あんたの持てるすべてをもって、助けてよね」
「それって、どんな時?」
「その判断は任せる。それと……奈々にも言ったけど、今後も私たちと一緒にいて。どんなに辛いことがあっても、私たちの友人として一緒に向き合って。言うなれば、それが私からあんたへの復讐よ」
美沙はどこか悲しげな微笑みを浮かべ、頷いた。
「ええ……約束する。私の償いと、あなたたちの新たな人生のために」




