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灼炎の転生魔女 〜異世界で始めるいじめ復讐〜  作者: 明鏡止水
2章 新たな友人と共に

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45/67

45.奪われた人生、殺された人生

 昼休み。

私はユエと二人で、中庭の隅にあるベンチに座っていた。


周囲には他の生徒たちもいる。 だが、私たちが話している内容を聞かれる心配はない。


「……昨日の授業、すごかったね」


ユエがパンをちぎりながら言った。


「夢共有の魔法?」


「うん」


 少しだけ声を落とす。


「正直、あれ聞いた時……思っちゃった」


「私も」


即答すると、ユエが苦笑する。


「だよね」


 二人とも、何を考えたのか分かっている。

もしリーネが奈々なら……もし本当に前世の記憶を持っているなら、その夢を見れば分かる。

言い逃れもできないほど、はっきりと。


「でもさ……私、なんか思い出しちゃった」


ユエが俯いた。


「何を?」


「奈々のこと」


私は黙った。

ユエは少しだけ、顔をしかめる。


「私、今でも覚えてるんだよね。廊下で肩ぶつかっただけで怒鳴られたこと」


「……うん」


風が吹き、ユエは遠くを見る。


「わざとじゃなかったのに……『どこ見て歩いてんの?バカ』『謝れば済むと思ってんのか?』なんて、そんな言葉を浴びせられた」


 ユエは悲しげに笑う。

笑っているのに、目は笑っていない。


「それだけで済めばまだいいけど、その後思いっきり突き飛ばされたんだよね」


私は拳を握った。

奈々ならやりそうだ、と容易に想像できた。


「それで、転んで膝擦りむいたんだけど……周りは見てるだけだった。まあ、そりゃそうだよね。みんな、見て見ぬふりをしてたんだもん」


 それは、とても静かな声だった。


「私……あの時初めて思ったんだ。人って、こんなに簡単に誰かを傷つけるんだなって。口でいろいろ言ってても、結局は自分を守ろうとするのが本能なんだって」


しばらく沈黙が続き、今度は私が口を開く。


「私はペンでやられたよ。手の甲を刺された」


 そう言うと、ユエの顔が強張った。


「あと、靴に画鋲を入れられたこともあるし、教科書を破られたりもした」


思い出したくもない。だが、忘れられない。

前世で受けた、心の傷の一つだ。


「でもね……一番嫌だったのは、暴力そのものじゃないんだ」


「……え?」


「気づいてたかな、奈々ってさ、手を出す前に必ず馬鹿にしてくるんだよ。『気持ち悪い』とか、『うざい』とか。『生きてる価値あるの?』とか」


 ユエは黙ってそれを聞いていた。


「『お前なんか死ねばいいのに』なんて言われたこともある。」


今でもよく覚えている。

例え死のうと、生まれ変わろうと、忘れられるわけがない。


「……それ、私も言われたな。三春がいなくなった後、奈々に言われた」


 私の背筋が冷えた。


「『次はあんただね。第二の三春だね』なんて言われたよ」


私は、怒りで頭が真っ白になった。

あいつ、そんなことまで言ってたのか。

しかも、それを実際に……。


「今なら分かるよ。私、あの時から壊れ始めてたんだなって」


 ユエは苦笑いし、しばらく二人とも黙った。

昼休みの喧騒だけが遠く聞こえる。


やがて、ユエは口をまた開く。


「だからさ、私にとって奈々は特別なんだ。美沙はまあ……許せないけど、まだマシなほうかなって思えた。でも奈々は違う」


美沙……言うまでもなく、ノエルの前世のことだ。

私も彼女のことは許せないが、それでも……一つの区切りはつけているつもりだ。


「だってあいつ、明らかに自分からやってたもん。誰かに命令されたわけでもなく、空気に流されたわけでもなく……自分の意思で私たちを傷つけて、自分の意思で笑ってた」


 それは私も思う。

あの女は、確実に自分の意思で手を出してきていた。

それは、あいつが一人でいた時も何かしらやってきたことからも確実だ。


「だから私、知りたい。本当に反省してるのか、ただ昔のことから逃げたいだけなのか……」


ユエは真っ直ぐ私を見る。

私も頷いた。それは、私自身も知りたいことだったから。


もし本当に、後悔しているのなら……もし本当に、罪と向き合っているのなら。

ノエルの時と同様に、私たちが決めるべきことも変わるかもしれない。


 だが――もしそうでないのなら、私とユエは躊躇わない。

二人とも、そのことだけは言葉にしなくても分かっていた。


「ユエは、どっちだと思う?」


「私は後者だと思う。あいつが反省なんかするわけないよ。槇原みずきとおんなじだ」


槇原みずき。それは、最初に私たちをいじめてきた元凶であり、グループのリーダーだった女の名前。

こいつさえいなければ、私たちがいじめを受けることもなかっただろう。


「確かにそうかもね。みずきは本物の悪人だったけど、奈々も……同じようなもんだったかも」


「かも、じゃなくてそうだよ。私たちが自殺に追い込まれた……殺されたのがその証拠じゃない!」


 ユエは力強く言った。

その表情は、怒りを噛み締めて震えていた。


「アリアがどう思ってるかは知らないけど、私はどうしても許せない。私は、私たちは、あいつらに殺されたんだ。人生をめちゃくちゃにされて、最後は命まで奪われた……!」


彼女の気持ちはすごくわかる。

私だって、自分は自殺したわけだけど、結局は奴らに殺されたのと同じだと思っている。


「復讐はするよ、絶対に。あいつらにやられるだけやられてそのまま……なんて寝覚めが悪いし、納得いかない。私一人でも、仕返ししてやる……何が何でも」


 ユエは私と同等、いやそれ以上に奴らへの怒り、復讐心を抱いているようだ。

その気持ちには大いに同意するが……それでもどこか、完全には肯定できなかった。


無論、私だって奴らのことは許せない。

けれど、ノエルと向き合った今の私は、以前の私とも少し違う。

本当に反省している人間まで、同じように裁つべきなのか──その答えは、未だはっきりと分からなかった。


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