↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灼炎の転生魔女 〜異世界で始めるいじめ復讐〜  作者: 明鏡止水
2章 新たな友人と共に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/66

43.復讐の条件

 その日の放課後。

精神魔法の授業が終わった後も、私はどこか落ち着かなかった。


リーネが見た夢が気になるのもあるが、それよりも目覚めた時のあの顔は……確実に何かを思い出した人間の顔だと確信していた。


「アリア?」


 隣を歩くユエが覗き込む。


「まだ気にしてるの?」


「まあ……ね」


「私も。あの時のリーネ、絶対変だったもん」


ユエは苦笑した。


 二人で学院の裏庭を歩いていると、前方にリーネの姿が見えた。

一人でベンチに座っている。


「……どうする?」


「別に、話しかける気はないけど」


そう言った時、リーネが何かを取り出した。

それは古い紙切れのようなもので、小さく呟く。


「なんで、今さら……」


その声は酷く苦しそうだった。


 私とユエは木陰に隠れたまま様子を見る。

もちろん、盗み聞きするつもりではなかった。

だが次の瞬間、リーネが紙を握りしめて震える声で言った。


「違う……違うのよ。もういいでしょ?もう終わったことでしょ?」


心臓が止まりそうになった。

……終わった?何が?


そのまま、リーネは続ける。


「ちゃんと反省した。悪かったと思った。結婚もして、子供も育てて……真面目に最後まで生きた」


 声が震える。

ユエが隣で息を呑み、私も固まっていた。

結婚?子供?……今のリーネは十歳前後のはず。そんな経験があるはずがない。

だが――前世なら話は別だ。


「もう、終わったことじゃない……」


リーネはそう呟いた。


「なんで今さら、三春の顔を思い出さなきゃないのよ……」



 その瞬間、世界から音が消えた。

ユエの肩が大きく震える。


私は言葉を失った。

三春。今、この世界でその名前を知っている人間はほとんどいない。

ましてや、偶然口にできる名前ではない。


リーネは俯いたまま続ける。


「悪かったと思ってる。なのに……なんでまた、会わなきゃいけないのよ。私だけのせいじゃないし、もう十分償ったでしょ……」


彼女は苦しそうで、けれどどこか苛立ったように呟き……紙を握る手が震えた。

そして、静かに顔を覆った。



 私とユエはその場から離れた。

足音を立てないように。気付かれないように。

しばらく歩いてから、ようやくユエが口を開く。


「……聞いた?」


「聞いた」


声が出るだけでも不思議だった。


「三春、って言ったよね」


「うん」


「結婚したとか、子供がいたとかも」


「うん」


 もう、否定の余地はない。

やはり、リーネは村上奈々だ。

しかも、前世の記憶を持っている。

そして――私のことも知っている。


「アリア」


ユエの声が低くなる。


「私、正直まだ信じきれてなかったんだけど……これ、もう間違いないね。あいつは……奈々は、全部覚えてるんだ。今日見た夢も、おそらくは……」


「そうだね。私もそう思う」


 私が頷くと、ユエは拳を握った。


「だったら、聞かなきゃいけない」


「何を?」


「あいつ、反省してるって言ってたけど……それが本当なのか。本当に反省してるなら、なんで今のアリアにあんな態度を取るのか」


彼女の瞳には怒りがあった。

その言葉に、私は何も答えられなかった。


ただ、一つだけ分かったことがある。

もう、後戻りはできない。

リーネは村上奈々だった。そして彼女もまた、私たちと同じように前世を覚えたまま、この世界へ来ていたのだ。


「私、あいつがこっちに来てたことも許せないけど……それ以上に、あいつが前と何も変わってないんだとしたら、そっちの方が許せない」


 その気持ちは大いに理解できる。

この世界に来てもなお、誰かをいじめるつもりでいるのなら……絶対に許せない。

あんな辛い思いをして、苦しむのは私たちだけで十分だ。


「ね、アリアはどう思う?私は正直、今まで見てきた限りだと……あいつ、何も変わってないと思うんだけど」


それは……確かにそうかもしれない。

奈々はおそらく、自分がかつていじめていた人間が生まれ変わって、すぐそこにいることなど気づいていないだろう。

とすれば、今の彼女の周囲への態度はありのまま、素の振る舞いだということになる。


それを今まで見てきた限り、彼女は……。


「……うん、そうだね。あの女は、少なくとも大きくは変わってない。しかも、さっきのを聞いた限り……もう終わったと思ってる」


 それが一番許せない、とユエは憤った。


「あれ聞いた時、今すぐあいつを殴ってやろうかと思った。終わってなんかないから。死んだところで、終わるようなことじゃないから……って」


ユエの気持ちは、すごくよくわかる。

だからこそ、私は彼女に言った。


「でもさ、こうしてこの世界に来てくれたのは何かの縁だよね?だからさ、チャンスをやろうよ。私たちの新しい力を使って。その結果次第で、復讐のやり方を決めるんだ」


 ユエは、そういうことならと頷いた。

ただ、確認するように「でも、許したくはない」と言った。


「それは私もだよ。でも、もしも……もしもだよ?あいつが本当に反省してるんだったら、少しは情けをかけてやってもいいんじゃない?」


それにはいまいち煮え切らない、納得が行かないという表情をしたが、一応はユエはうんと答えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。