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灼炎の転生魔女 〜異世界で始めるいじめ復讐〜  作者: 明鏡止水
2章 新たな友人と共に

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40.第二の標的

 丘を下りる直前、ユエ――芽依が立ち止まった。


「ねえ、アリア」


「ん?」


「今日のこと……まだ誰にも言わないでほしい」


彼女は少し不安そうな顔をしていた。


「ノエルにも?」


「うん」


 ユエは小さく頷く。

ちなみに、ノエルも転生者であることはつい先ほど話したばかりだ。

ユエは衝撃を受けてはいたが、露骨に怒ったりはせず、ひとまず彼女と直接話してみる、と言うに留まった。


「ノエルのこと、嫌いなわけじゃないよ。むしろ好き。でも……まだ心の整理がついてないの」


 それは当然だろう。

ノエルもまた前世を持つ人間……それも、いじめに加担していた側の人間だ。

私は既に和解しているが、芽依はそうではないし、そんなに簡単な話ではない。


「わかった。私からは言わない」


するとユエは、少しだけ安心したように笑う。

そして、彼女は続けた。


「ありがとう。その代わり……ちゃんと話すって約束する。自分の口で言いたいし」


「うん」


私も静かに頷いた。




 それから数日後。

学院の日常は変わっていない。

授業を受けて、友人たちと過ごして、訓練をする。


何も変わらない……はずだった。

けれど、私の中では確実に何かが変わっていた。



 実技訓練の後。

私は少し派手に炎を放ってしまった。


「ふぅ……」


額の汗を拭く。

すると、「また無茶したの?」とリーネが呆れたように言った。


 その瞬間──


『あんた、本当に空気読めないよね』


知らない声。知らない教室。知らない景色。

なのに――胸が締め付けられるほど懐かしい。


「っ!」


 私は思わず頭を押さえた。


「アリア?どうしたの?大丈夫?」


ノエルが心配そうに覗き込む。


「え……?」


気付けばみんながこちらを見ていた。

リーネも眉をひそめている。


「どうしたの」


「いや……なんでもない」


そう答えるしかなかった。



 ……今のは何だ。誰の声だ。

なぜ、あんなにはっきり聞こえた?





 その日の昼休み。

食堂へ向かう途中で、前を歩くリーネが振り返った。


「アリア」


「なに?」


「課題、提出した?」


「まだだけど」


「早めにやりなさいよ」


いつもの調子だった。だが――


『だから、そういうところが嫌われるんじゃない?』



 ……まただ。

頭の奥で、声が響く。

女子生徒の声。


それは聞いたことがある。絶対にある。

なのに、はっきり思い出せない。



「アリア?」


今度はリーネの声だった。

私は慌てて我に返る。


「ご、ごめん」


「聞いてた?」


「うん、聞いてる」


「そう。ならいいけど」


リーネはそれ以上何も言わず、歩いていく。

その背中を見ながら、私は妙な寒気を覚えていた。




 その日の帰り道。

私は一人で考えていた。


偶然だろうか。前世を持つ人間が、二人も近くにいた。

なら――三人目がいてもおかしくないのではないか。

そんな考えが頭をよぎる。


だが、すぐにそれを否定した。

まさか。ありえない。

そんな都合のいい話があるはずない。


 しかし。


『あんたみたいな奴は、昔から――』


あの日、教室でリーネが口走った言葉。

あれだけが、どうしても忘れられない。

そして今、リーネの言葉を聞くたびに、知らない記憶の欠片が浮かんでくる。


まるで、封じられていた何かが少しずつ目を覚まし始めているかのように。



「……!」


 その直後、ピンと来た。

そうだ、あの声は……あいつだ。


村上奈々(なな)。前世で私をいじめていたグループの一人。

口が悪い上に手が早く、幾度となく殴る蹴るの暴力を振るってきた。

何ならペンを手に刺されたり、靴に画鋲を入れられたりしたこともある。


カッターで背中を刺された時は、本気で殺されるかと思った。

……いや、実際に後に殺されたのだが。



 それに気づいた途端、私は自分の中で目覚めつつあるものの正体を理解した。

そうか、これは……ノエルの時と同じものだ。

まさか、あいつもこっちに来ていたとは。


しかもこの女は、最近は明らかに私を邪険にし始めている。

思い返せば、前世でも最初はそんな感じで始まった。


つまりこいつは、いずれはまた私をいじめてくるのだろう。

だが、そうはいかない。


 ノエルはそうでもないようだったが、こいつは転生しても何も変わっていない。

人としては終わっているだろうが、私からすればむしろ好都合だ。


もしも、美沙のように心を入れ替えていないのであれば……心置きなく復讐ができる。

私と同じように殺されたユエ、もとい芽依と力を合わせて、たっぷりと。

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