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灼炎の転生魔女 〜異世界で始めるいじめ復讐〜  作者: 明鏡止水
2章 新たな友人と共に

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39/60

39.炎は再燃する

 初夏の風が吹く中、私たちはしばらく何も言わなかった。

ただ抱きしめたまま、互いの涙が落ち着くのを待っていた。


やがてユエ――芽依が、小さく息を吐く。


「……私ね」


震える声だった。


「三春がいなくなった後、しばらくは何も変わらなかったの。先生たちも、生徒たちも、みんな普通だった。まるで……何もなかったみたいに」


彼女は苦しそうに笑う。

私は、黙って聞いていた。


「でも、一ヶ月くらい経った頃かな。今度は、私があいつらの標的にされた」


 ユエは視線を落とした。

胸の奥が、冷たくなる。


「最初は陰口だけだったよ。『あの子と仲良かったよね』とか、『次はあんた?かな』とか。でも、それだけじゃ終わらなかった」


彼女は拳を握り、声が少し掠れた。


「机に落書きされたり、教科書を隠されたり、無視されたり……」


私は目を閉じた。

聞き覚えのある話だった……嫌になるほど。


「それでね、ある日学校へ行こうとして、玄関まで行ったんだけど……」


 ユエは続ける。

震える笑みを浮かべながら。


「足が動かなかった」


私は何も言えなかった。


「怖くて。学校が、教室が怖くて……人が怖くて」


呟くように言い、風が草を揺らす。


「それから、不登校になった。高校も辞めた」


 静かな声だったが、その一言の重さは大きかった。


「家族は心配してくれたよ。病院にも連れて行ってくれたし、『無理しなくていい』って言ってくれた」


ユエは空を見上げる。


「でもね、申し訳なかった」


「芽依……」


「働くこともできない。学校にも行けない。ただ家にいるだけ。生きてるだけで、迷惑をかけてる気がした」


涙がまた頬を伝う。


 その言葉に、私は前世の自分を重ねていた。

同じだった……あまりにも。


「それで、最後は……自分の部屋で首を吊った」


ユエが静かに言うと共に、風が止まったような気がした。


「だからね、三春の気持ちはすごくよく分かるの」


彼女は私を見た……涙で濡れた瞳で。


「誰にも頼れなくなる苦しさも、生きてるのが辛くなるのも、消えたい……死にたいって思うのも、全部」


 私は唇を噛んだ。

芽依は、本当に私と同じ場所まで落ちていたのだ。


違うのは順番だけだった。

私が先で、芽依が後だった──それだけのことだ。



 しばらく沈黙が続いた。

そして――ユエの表情が変わった。

悲しみだけではない。もっと暗く、もっと強い感情……怒りで。


「私、今までこんな大事なことを忘れてた。でも……だからといって過去は消えないし、許せるわけでもない」


その声は低く、ユエは拳を強く握っていた。


「あいつらは、私たちの人生を壊した。三春の人生も、私の人生も……」


震える声の奥には、確かな憎しみがあった。


「あいつらのこと、許せない。絶対に」


 初めて見る顔だった。

いつも明るく笑っているユエとは違う……前世の、芽依の顔そのものだ。


「あいつらのせいで、私と三春は人生をめちゃくちゃにされて、最後には自殺する羽目になった。許さない……何があっても」


風が強く吹き、草原がざわめく。


「……三春」


ユエは私を見る。


「私、今でも思ってるの……もし、またあの日に戻れるなら。もし、またあいつらの前に立てるなら」


そこで言葉を切り、静かに続けた。


「私は、もう黙ってない」


その言葉は、誓いのようだった。


 私は答えなかった。答えられなかった。

なぜなら――その怒りは、私の中にも確かに存在していたからだ。


ひとつの復讐をやり遂げ、消えたと思っていた炎が──芽依の言葉で、胸の奥で静かに揺れているのを感じた。



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