4.魔法学院への扉
翌朝、悲願の入学式の日がやってきた。
私は愛用の真っ赤なワンピースを着込み、同じく愛用の赤いとんがり帽子をかぶる。
ただ、今までと1つだけ違うところがある。
それは帽子に黒い帯を巻き、金色のレリーフをつけている、ということだ。
私が入学するゼスメリア魔法学院は、厳密な制服の指定はない代わりに、男女問わず帽子をかぶり、その帽子に指定のレリーフをつけることになっている。
帯の色は毎年変わるが、各学年ごとに違ったものが指定されるらしい……まあ、要は前世で言うところの下敷きのラインの色のようなものだろう。
「アリア、準備できた?」
「うん!いつでもオーケーだよ!」
しっかりと身だしなみを整え、忘れ物などがないよう確認する。
と言っても、私が持っていくものはたった一つ……三年前から使っている、素朴な木製の杖だけなのだが。
「よかった。それじゃ、行きましょうか」
家を出てすぐ、母が何かの魔法を唱えて白色の魔法陣を召喚する。
これは移動用の魔法陣というもので、この中に入ればたちまち遠くへワープできる。
これまでも何度か入ったことはあったが、今回はどこに繋がっているのだろうか。
そんな期待を寄せて、ワープした先は……にぎやかな町中、それも学校の門のすぐ手前。
「ゼスメリア魔法学院」と書かれた立派な門に、その奥にそびえる大きな建物……まさしく、魔法学院という感じだ。
なんだか無性に興奮する。
前世で見た学校より、ずっと大きくて立派に見える。もちろん、気のせいかもしれないが。
ちなみにさっきの移動用魔法陣は、明日からの私の基本的な通学手段にもなるらしい。
つまりは、ほぼ学校と家とをワープで直接行き来できるのに等しい。
毎朝、自転車を一時間ばかり飛ばして通学していた前世の学校とはえらい違いだ。
これなら、万一寝坊したりしても焦る必要はない……めちゃくちゃ助かる。
次に私は、会場に来ている人たちのことも見回した。
青、黄色、白……様々な髪をした魔法使いたちが、ところせましと並んでいる。
「いろんな色の髪の人がいるんだね」
そう呟くと、母が微笑んだ。
「言ったことなかったかしら?髪の色は……」
「あっ、そうだった。目と髪の色は、天賦の証なんだよね」
天賦……すなわち、生まれ持った能力。
この世界には八つの魔法の属性があり、魔法使いはその中のどれか一つに生まれつき適性を持っている。
これを「天賦」と呼び、髪と目の色にも影響を与える。
例えば、炎の天賦を持つ私と母は目と髪が赤く、水の天賦を持つ魔法使いは目と髪が青くなる、といった感じだ。
「そう。この学院には、各地からいろいろな天賦を持つ魔法使いが集まってくる。もちろん、あなたと同じ炎の天賦を持つ魔法使いもいるはずよ」
そう聞くと親近感が湧く。同じ属性の魔法使い、というだけではあるが。
集まっている人たちのうち、子供はみんな私と同じように帽子をかぶり、黒い帯と金色のレリーフをつけていた。
まあ、彼らも私と同じ新入生なのだろうから、当然ではあるが。
この中に、私が仲良くなれそうな子はいるだろうか。
正直不安だ……けど、きっと大丈夫だ。
私の母は有名人。それを分かっていて、わざわざ私に喧嘩を売ってくるような奴はそういないだろう。
ここにいる他の子たちも、少なからず不安を感じてはいるだろうが、私の感じていたそれはきっと、ここの誰よりも強いだろう。
何しろ、かつて友達がろくにできなかったばかりかいじめられ、自殺に追い込まれた経験と記憶があるのだから。
「そろそろ時間ね……アリア、ピシッとして。入場が始まるわ」
母の言葉を聞いて、私は自然と背をまっすぐに伸ばし、んっ……と息を呑んだ。




