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灼炎の転生魔女 〜異世界で始めるいじめ復讐〜  作者: 明鏡止水
2章 新たな友人と共に

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35/58

35.理由なき涙と謝罪

 古代文明の遺跡。

学院から数時間離れた山岳地帯の奥深く。

風化した石造りの建物は半ば地中に埋まり、それでもなお圧倒的な存在感を放っていた。


「すご……こんなの初めて見た」


ユエが思わず声を漏らす。


「私も」


ノエルも周囲を見回していた。


 今回の課題は、探索実習。

古代文明の遺跡を実際に調査しながら、内部の構造を記録するというもので、戦闘よりも知識・観察重視の授業だ。


私たちは慎重に奥へ進む。

壁には大量の壁画が刻まれていた。

古代文字。祭祀。戦争。そして、人々の日常。


「なんか、不思議な感じ」


ユエが呟く。


「何百年も前の人たちが描いたものなのに……見たことあるような気がする」


「そうね」


リーネも珍しく見入っていた。



 ……その時だった。


ユエが足を止め、小さな声を出す。


「……え?」


それに、私たちは振り返った。

ユエは一枚の壁画を見つめていた。

そこには数人の少女が描かれているが、何か特別な壁画には見えない。

ただの、古代人の日常風景だ。


なのに──ユエの瞳から、涙が零れた。


「ユエ?どうしたの!?」

 

 ノエルが慌てる。

ユエは自分の頬を触り、「あれ……?」と困惑した顔をした。


「涙……?なんで……」


声を震わせ、ぽろりとまた涙が落ちる。


「もしかして、この絵から何か感じるの?」


「感じる……そうだ。なんだかわからないけど、すごく……懐かしい感じがする……」


 その場が静まり返った。


「見たことないはずなのに……」


ユエは壁画から目を離せない。


「知らない人たちなのに……」


胸を押さえる。

彼女は、何やら苦しそうだった。


「なんで……こんなに悲しいんだろう……」



 それには、誰も答えられなかった。

ただ、一つだけ……妙な既視感を覚えていた。


ユエの横顔が、泣いているその姿が──どこかで、見たことがあるような気がした。





 その後も探索は続いた。

遺跡の奥。円形の広間。

そこには、無数の石像が並んでいる。


と、今度はリーネが止まった。


「あ……」


ぽつりと呟き、リーネは一体の石像を見上げる。


それは、特に何の変哲もない像。

古代の女性を模したものらしい。

……しかし、それを見てリーネの表情が固まる。


 しばらく黙った後、彼女は小さく口を開いた。


「ごめん」


私たちは思わず振り返る。


「え?」


マシュルが聞き返す。

リーネ自身も固まった。


「……あれ?」


 数秒遅れて、自分の言葉に驚いたような顔になる。


「あたし、今……」


石像を見つめ、不思議そうに言う。


「なんで、謝ったんだろ」


そこまで言ったところで、リーネは黙り込む。

石像を見つめる目だけが、ひどく苦しそうだった。


その様子を見ながら、私は妙な胸騒ぎを覚えていた。


 ユエもリーネも、最近こういうことが多い気がする。


知らないはずなのに、知っている。

初めて見るはずなのに、懐かしい。

理由もなく涙を流し、理由もなく謝る。

それも、二人して同時期に……これは、偶然だろうか。



 その時──

広間の中央に置かれていた古い魔道具が淡く光った。


それには誰も気付かなかった。

ただ一人、リーネだけがその光を見て、その瞬間に背筋を震わせていた。


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