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灼炎の転生魔女 〜異世界で始めるいじめ復讐〜  作者: 明鏡止水
2章 新たな友人と共に

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34.違和感の芽吹き

 学院から半日ほど離れた森。

春から初夏へと移り変わる季節の中、私たちは薬草採取の課題に取り組んでいた。


「これがヒールリーフ。傷薬の材料になるやつ」


ノエルが葉を摘みながら説明する。


「へえ、そうなんだ」


ユエは目を輝かせた。


「ノエルって、本当に詳しいんだね」


「植物図鑑ばっかり読んでるからね」


「なんか、先生みたい」


「それ褒めてる?」


「もちろん!」


二人は楽しそうに笑う。

その様子を見ながら、私は少しだけ頬を緩めた。



 それから少し進んだところで、ノエルが別の植物を指差した。


「これは触らない方がいいよ」


「毒草?」


「うん。乾燥させたり、火を通しても毒が残るから、手を出さないのが一番」


ノエルは頷く。


「へえ……」


ユエは葉を覗き込み、そして何気なく言った。


「こういうのって、飲み物に混ぜたりすると危ないんだよね」


空気が止まった。


「……え?」


 ノエルが首を傾げ、ユエ自身も固まった。


「あれ?なんで私、そんなこと知ってるんだろ……?」


そう言って、不思議そうな顔をする。


「え、知らないのに言ったのか?」


マシュルが呆れる。


「うーん……なんか、思ったのよね。何だろう?」


ユエは、わりと本気で考え込んでいた。


 私は黙っていた。

理由はわからない。けれど、妙に引っかかった。

まるで、実際に見たことがあるみたいな言い方だったからだ。




 その後。

森の奥で、小さな悲鳴が聞こえた。

見ると、ウサギによく似た動物が罠にかかっていた。

足に縄が食い込み、苦しそうにもがいている。


「野生動物だろ」


マシュルが言う。


「放っておけば?」


「まあ、課題とは関係ないしな」


他の班の生徒もそう言って通り過ぎていく。

だが、リーネだけが立ち止まった。


「待って」


彼女は眉をひそめる。


「放っておくのは、なんか気分が悪い」


「え?」


「助ける」


それだけ言うと、彼女はしゃがみ込んで縄をほどき始めた。

驚くほど手際がいい。動物は逃げることもなく、じっとしている。


 やがて縄が外れ、小動物は森の奥へ走り去った。


「はい、これで終わり」


リーネは立ち上がる……いつも通り無表情で。

どうも、特別なことをしたつもりはないらしい。


 私は少し驚いていた。

無愛想で口数も少なく、近寄りがたい人間だと……最初はそう思っていた。


でも、違うのかもしれない。

この子は不器用なだけで、本当はいい子なのかもしれない……いや、きっとそうだ。

ノエルと同じく、根はいい子であるに違いない。




 夏前、実戦形式の討伐実習があった。

ここで、私たち五人の役割は自然と固まった。

前衛のマシュル。支援のノエル。遠距離攻撃のユエ。分析役のリーネ。

そして、汎用火力の私。


マシュルは主に防御を担当し、ノエルはその援護をする。ユエは遠距離から攻撃する他、リーネはその援護もする。

そして、私は距離を問わず火力を出していく、という構成である。



 最初は順調だった。

低級魔物を次々と倒し、先へと進んでいく。

しかし、森の奥で予想外の群れに遭遇した。


「これ……ちょっと多いね!十体はいる!」


リーネが叫ぶ。


「こんなにいるなんて……聞いてないぞ!」


マシュルが盾を構える。

まあ、この盾は彼が土魔法で生み出したもので、耐久はあまり高くないのだが。


 私は炎を放つ。

一体、二体、三体……と、次々と魔物を吹き飛ばしていく。


だが、気付けば私は前へ出すぎていた。

そんなことはお構いなしに、魔物は次々と押し寄せてくる。

後ろの仲間の声も聞こえなくなる。


──燃やせ。燃やせ。全部燃やせ。

胸の奥で、どこか懐かしい感情がざわつく。



 やがて、思わぬトラブルが起きた。

30センチほどの火球を放ったつもりが、倍くらいの大きさがある火球が飛び出し、魔物に命中して強烈な爆発を引き起こしたのだ。


その瞬間、ああ、またやってしまった……と思った。

これは、魔法の暴走だ。


以前から、私はちょくちょく魔法が暴走して想定外の威力になることがあった。

一般的には、魔力を制御する技術が未熟だとそうなりやすいらしい……私は、魔力の制御は上手くやっているつもりなのだが。



 その時──。


「アリア!」


ユエの叫び声が響いた。


「一人で、抱え込まないで!」


私は振り返る。

ユエの顔は真っ青だった。

そして──震えていた。今にも泣きそうなほど。


「え……」


 その異様なほど真剣な表情に、思わず動きを止める。


あとで聞いたが、ユエ自身も驚いていたという。

なぜ、自分がこんなに必死なのかと。



「お願いだから、一人で行かないで……」


 声が震える。

まるで、過去に誰かを失ったことがあるみたいに。


そしてその瞬間、私の胸にも奇妙な感覚が走った。

……なぜだろう。今の言葉、妙に胸に刺さった。



 その後、ユエが周囲の木々や草を凍らせて守ってくれたおかげで、暴走した私の炎が飛び火して火事になることはなかった。

その際、リーネも他のみんなと同じように喜んでいたのだが──なぜか、妙な違和感を感じた。

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