33.ユエとリーネ
数日後の、桜が咲き始めた昼休み。
私はノエル、マシュル、ユエ、リーネと一緒に中庭で昼食を取っていた。
クラス替えの後、空き時間はこの五人でいることが多い。
ユエは相変わらずよく喋るし、マシュルもそれに付き合う。
ノエルはそんな二人を見ながら笑い、リーネは少し離れた場所で静かにサンドイッチを食べていた。
「リーネってさ」
ふと私は言った。
「いつもそんな感じだよね」
「そんな感じって?」
「なんか……無愛想」
「失礼ね」
即答だった。
すると、ユエが吹き出す。
「ほら、そういうところだよ」
「うるさい」
「まあ、昔からそうだもんね」
「昔?」
「いや、なんとなく」
ユエは首を傾げた。
「なんか……ずーっと昔から知ってる気がするんだよね、リーネのこと」
「は?たかだか去年からの付き合いでしょ?」
「いやまあ、そうなんだけどさ」
ユエは不思議そうに笑う。
その様子を見ていた私は、少しだけ違和感を覚えた。
今の会話……何か引っかかる。
だが、それが何なのかはわからない。
昼食後。
マシュルたちが先に教室へ戻り、私とリーネだけが少し遅れて歩いていた。
春の柔らかい風が、木々を揺らしている。
「……ね、アリアってさ」
不意にリーネが口を開いた。
「ん?」
「一人になるの、嫌い?」
私は思わず足を止めた。
あまりにも唐突な質問だったからだ。
「どうして?」
「別に、深い意味はないよ。ただ、なんとなく」
リーネは前を向いたまま言う。
その横顔は相変わらず無表情だった。
「……嫌いだよ」
私は正直に答えた。
「昔は平気だと思ってたけど、今は嫌かな」
「そう」
それだけ言って、彼女は黙った。
でも、ほんの一瞬だけ……彼女が安心したように見えた。
その日の放課後。
今度はユエと二人きりになった。
「私、思うんだけど……アリアってさ」
「なに?」
「優しいよね」
「は?」
思わず変な声が出た。
「どこが?」
「だって、誰かが困ってたら放っておけないじゃん」
「いやいや、そんなことないよ」
「あるよ」
ユエは笑う。
そして──不意にその笑顔が少しだけ曇った。
「そういう人が、傷つくのって嫌だなって思う」
「……え?」
「……ううん、なんでもない!ごめん、変なこと言った!」
ユエは慌てて笑い直した。
その夜。
家に帰った私は、ふと今日のことを思い返していた。
ユエもリーネも、悪い子じゃない。それはわかる。
でも時々、不思議な感覚がある。
何というか……初めて会ったはずなのに、どこかで見たことがあるような。
どこかで、話したことがあるような。
そんな感覚だ。
もちろん気のせいだろう。
世界には、似た人間なんていくらでもいる。
そう思いながらも、私は窓の外へ視線を向けた。
春の夜空には、静かに月が浮かんでいた。




