32.二年生の幕開け
そんなこんなで、秋は暮れ冬になっていった。
そして間もなく年が明け、ひと月またひと月と時間が過ぎていき、気づけば修了式を迎えようとしていた。
修了式の日は、入学式の時と同じように生徒の保護者たちが学院に来た。
もちろん、私の母……セリエナ・ベルナードも。
シルフィンはあからさまに興奮していたが、他のみんなはそうでもなかった。
とはいえライドやノエルも母に注目してはいたし、後に母の姿を見て「すごい人に会えた」という気持ちになった生徒が複数いたことがわかったが。
修了式が終わり、十一歳の誕生日を迎え、あっという間に始業式の日が来た。
今日から、私たちは二年生。
去年より高度な魔法や技術、知識を学ぶことになり、難易度は上がるがその分生活や戦闘に応用できる範囲も広がる。
教室も三階に上がり、一つ上級生になったという感じがする。
まあ、だからといって慢心したりはせず、むしろ精進するつもりでいるが。
さて、今年はクラス替えがあった。
というより、この学校では毎年クラス替えが行われるらしい。
残念ながら今回、シルフィンとライドとは別のクラスになった。
二人は一組、私は二組。
まあ、ノエルとマシュルとは引き続き同じクラスになれたのでよかったが。
また、今回は新たに二人の知り合いができた。
どちらも水色の瞳と髪を持つ女の子で、天賦は氷。
お互いに去年同じクラスで知り合い、仲良くなった間柄らしい。
名前はそれぞれユエ・フェルシュタイン、リーネ・シュトラウス。
ユエは髪が短く、何となくシルフィンに似ているが、一メートルほどの長さがあって先端に青い宝玉がはめ込まれた杖を持っている。
リーネはユエとは逆に髪が長く、俗に言うポニーテールのような結び方をしている。
杖は二十センチほどの緑の杖で、私の使う杖と同じように「ただの棒」にも見える。
ユエはわりと明るくよく笑う子なのだが、リーネはむしろ常に不機嫌そうに見える。
ただし本当に不機嫌なわけではなく、話しかければちゃんと答えてくれる……あまり笑わないが。
「ね、アリアってアリア・ベルナードって言うんだっけ?それって、あのセリエナ・ベルナード様の娘ってことよね!」
「そうだよ」
すると、ユエはシルフィンよろしくはしゃいだ。
彼女も、母には憧れを抱いていたらしい。
「ユエ……あんまりはしゃがないでよね」
リーネにそう言われ、ユエは大人しくなった。
しかしそんなリーネも、私の顔を見つめて目を見開き、「あなた、魔力は確かに強いね」と言った。
「え、アリアのすごさがわかるの?」
ノエルの問いに頷き、リーネは「あたしは、人の持つ魔力に敏感なの」と言った。
「氷は冷たさや冷静さの象徴だけど、炎は温かさや熱意の象徴。それでいて強い魔力を持つなら……あなたは温かくて、熱心な人なんじゃないかな」
そんなことを言われたのは初めてだ。
しかも、それも今日出会ったばかりの人に。
「へえ?良いこと言うじゃないか。おまえ、いい奴だな!」
マシュルが笑いかけると、リーネはふんと鼻を鳴らした。
「あくまで憶測を言っただけよ。まだ大して話してもない人のことだもの、そんなピタリとはわからない」
「ま、それはそうだよな。けど、アリアは絶対に悪い奴なんかじゃあない。おれが保証するよ」
「そうなのね。そう言うあなたは……魔力は並、土の魔法使いか」
魔力が並だと言われたことに彼は腹を立てたが、あながち間違いではない。
彼は別に成績優秀でもなければ、魔法の実習授業でもそこそこ止まりの、普通の生徒である。
なおリーネによれば、ノエルは私ほどではないが、少し強めの魔力を持つらしい。
これについても、わりと当たっていると思う……ノエルは、授業ではマシュルより魔法の威力や成功率が高い場面が多い。
結局、この日は半日で放課になったので、あまり話すことはできなかったが、私は二人はそんなに悪い子ではないのかな、と感じた。
とはいえ、油断はできない。
クラス替えの直後は、いわばみんな仮面を被って本性を隠している。それに騙されず、慎重に相手の本性を探り、仲良くなる相手を見定めなければ……。
前世のこともあって、余計にそう思った。




