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灼炎の転生魔女 〜異世界で始めるいじめ復讐〜  作者: 明鏡止水
1章 転生と復讐の幕開け

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25/48

25.追憶の時間

 昼休み。

持ってきた昼食を食べるため、食堂へと向かう生徒たちの声が廊下に響く。


私は窓際に立ちながら、その背中を見ていた。

……ノエル。

植物図鑑を抱え、いつものように歩いている。


朝からずっと考えていた。

どうすればいいのか。どうやって確かめるのか。

そして――答えはすでに出ていた。


「メモリア・クロード」


 小さく詠唱したのは、追憶の魔法。

以前授業でやった、忘れている記憶を映し出す魔法。

本来は、過去を振り返って探し物をする時なんかに使うものだが、今の私には別の使い道があった。


ノエルに、思い出させる……山本美沙だった頃のことを。かつて、私にしたことを。

なかったことになんてさせない。忘れているのなら、思い出させてやる。

絶対に。



「ノエル」


 私は声をかけた。


「ん?」


彼女が振り返る。

相変わらず警戒心の薄い顔だ。

何も知らない顔。何も覚えていない顔。


「少しだけ、付き合ってくれない?」


「いいけど……どうしたの?」


首を傾げる。


「見せたいものがあるの」


私は笑った。

自分でも驚くほど穏やかな笑顔だった。




 人気のない中庭。

昼休みなので、誰もいない。

風が、木々を揺らしている。


「それで?何を見せたいの?」


ノエルが尋ねる。

私は答えない。

代わりに右手を差し出した。


「少しだけ、目を閉じて」


「?」


不思議そうな顔をしつつ、ノエルは従った。

私はその額へ杖を向ける。

そして小さく詠唱し、魔力を流し込んだ。



 淡い光が広がる。

ノエルに、かつての美沙の記憶が流れ込む。


放課後の教室。女子生徒たちの笑い声。机に伏せる私……鈴木三春。

その背中へ投げつけられる紙くず。

そして、背後から聞こえる声。


『三春ってさ、何やってもキモいよね』


『わかるー』


『空気読めよって感じ』


 その輪の中にいる少女。

山本美沙は笑っている。とても楽しそうに。当たり前のように。

私を、三春を……傷つけながら。




 そこから、場面が変わる。

廊下。勇気を出して近づく私。


『あのさ……』


『うっさい。こっちくんな』


冷たい声。周囲からうっすらと聞こえてくる、冷たい笑い。

私の顔は青ざめ、ため息をつく。




 そこで、場面がまた変わる。

机の中のゴミ。隠された教科書。聞こえる陰口。

悪意。嘲笑。孤独。絶望。悲しみ。


そして最後。

屋上。フェンスの手前。

そこに立つのは、顔にわずかに涙の跡を残した私。


『どうして……』


誰もいない。誰も助けない。誰も味方じゃない。

そして、私はフェンスを登り――頭から落下した。




「――っ!!」


 ノエルは悲鳴を上げた。

魔法が弾け、私は杖を下げた。


彼女が膝をつく。

呼吸が荒い。肩が震えている。


「はぁ……はぁ……」


額から汗が流れる。顔色も悪い。

私は黙って見下ろした。


当然だ。思い出したのだから。

かつて、自分が何をしたのかを。


「な……なに……これ……」


 ノエルが頭を抱える。 


「知らない……知らないはず、なのに……」


涙がこぼれる。


「この子、誰……?」


もう薄々気づいてるだろうに、とぼけるな。と思う。

しかし次の瞬間、ノエルの顔色が変わった。


「知ってる……私は……この子を……」


 そこで初めて、私の名前を呼んだ。


「み……はる……」


掠れた声。

私は息を呑んだ。

もう立場も姿も違うというのに、未だにこの女に名前を呼ばれると、ゾワッとする。


「なんで……なんで、私……」


 ノエルの瞳から涙が溢れ、頭を抱える。

断片的な記憶が戻っているのだろう。

声を震わせる彼女は、その数秒後にまた固まった。


『三春ってさ、なんかずるいよね』


自分の声。前世と今世の、自分が発した声。

それを、思い出したのだろう。


「ぁ……」


ノエルの顔から血の気が引く。


「違う、違う……!」


震えているが、否定できない。

思い出してしまったからだ。



 私は静かに見つめる。

胸の奥で、長い間燃え続けていた炎を感じながら。


ようやく……ようやくだ。

山本美沙は思い出した。かつて、自分が何をしたのかを。


「違わないよ。ノエル……いや、美沙」


 私は、目の前の女を睨みつけた。


「少しだけ時間をやる。今日の放課後、中庭に来い。そこで話をしよう」


美沙は震えながら、私を見てきた。

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