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灼炎の転生魔女 〜異世界で始めるいじめ復讐〜  作者: 明鏡止水


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22/45

22.残された違和感

 翌日。

朝になる頃には、私の体調はほとんど元に戻っていた。


手足の痺れも消え、腹痛もない。

多少のだるさが残っているものの、昨日までの苦しさが嘘のようだった。


「もう、大丈夫そうね」


朝食の席で母が言う。


「うん、今日はもう学院に行けそう」


私は頷く。


「ならいいけど……無理だけはしないのよ?」


「わかってる」


そう答えながらも、内心では少し安心していた。

どうやら本当に治ったらしい……二日休むだけで済んでよかった。




 学院へ着くと、教室の空気はいつもと違っていた。

何だか、どこか落ち着かない。

生徒たちが小声で話し合っている。


「聞いた?」


「うんうん、聞いたよ。やっぱり食中毒だったらしい」


「怖くない?」


そんな声が聞こえてくる。


 私は席へ向かった。


「あっ、アリア!」


シルフィンだった。

顔色は少し悪いが、元気そうだ。


「もう大丈夫なの?」


「うん。シルフィンは?」


「私もほとんど治ったよ。ちょっと辛かったけどね」


その隣では、ノエルも座っている。


「おはよう……」


「おはよう」


 昨日まで胸の奥に引っ掛かっていた違和感は、彼女の顔を見た瞬間にかなり薄れた。

夢の中の冷たい表情など、どこにもない。いつものノエルだ。




 やがてホームルームが始まり、フレア先生が教壇へ立つ。

普段よりも少し険しい表情だった。


「まず最初に、君たちも既に知っているであろう今回の件について、説明する」


教室が静まり返る。

私たちは自然と背筋を伸ばした。


「昨日、体調不良を訴えた生徒の検査結果がまとまった」


先生はそう言って、一枚の紙を取り出した。


「原因は、先日の野外実習で採取した食材。俗に食中毒と呼ばれるものだった」


 教室がざわつく中、フレア先生は続ける。


「調査で、原因となった食材も判明した」


そこで黒板に、一つの絵が描かれた。

丸い傘を持つ紫色のキノコ。

それを見た瞬間、私は思わず固まった。


「あ……」


ノエルも目を見開く。

それに構わず、フレア先生は静かに続ける。


「このキノコは、野外実習初日に採取されたものだ」


教室のあちこちで驚きの声が上がるが、先生の説明は続く。


「食用にされる"ルミナタケ"というキノコによく似ているが、実際はまったく別の種だ」


黒板にもう一つの絵が描かれる。

その見た目は、ほとんど同じだった。

違いがあるとすれば、傘の裏側の模様くらいである。


「これが、今回原因となった"ニセルミナタケ"だ。このキノコを食べると、腹痛、下痢、手足の痺れ、大量の発汗といった症状が起き、その後頭痛や幻覚症状が現れることがわかっている」


 まさに私たちの症状だ。

でも、私は幻覚なんて……そう思って、はっとした。


昨夜の夢。誰もいない学院。ノエルの顔。山本美沙の声。

あれは――。


「……」


 私は小さく唇を噛む。

もしかすると、あれはただの悪夢ではなかったのかもしれない。


毒による幻覚作用が、眠っている間に夢として現れた。そう考えれば説明はつく。

もちろん、本当にそうだったのかはわからない。前世の記憶が刺激されただけかもしれないし、単なる偶然かもしれない。


けれど、いずれにせよあの夢はあまりにも鮮明だった。



「……なお」


 フレア先生の声で、我に返る。


「今回の件については、教員側の確認不足も原因の一つだ。採取に関わった生徒をからかったり、過剰に気にしたりはしないように」


教室が静かになる。

先生は真剣な表情だった。


 私は隣を見た。

ノエルは俯いていた。

膝の上で、手を握りしめている。


「私が……」


小さな声が聞こえた。


「私が間違えたから……」


その横顔は、今にも泣き出しそうだった。


 違うよ、あなたのせいじゃない。

そう言いたくなったが、なぜかすんなりと言えなかった。

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