105.誰一人欠かせない
魔物はすぐにリーネに気づき、歩み寄る彼女に向かってつるを伸ばしてきた。
その表面はツルツルしているように見えるが、毒があるのかもしれない。
私はあの魔物のことをよく知らないが、反射的に「リーネを危険な目に遭わせたくない」という思考が浮かんできた。
それ故にすぐ魔法を使おうとしたが、シルフィンに止められた。
「あの魔物は、つるで攻撃をガードできる。何かを襲っている間くらいしか、攻撃できる隙がないの」
「えっ?それじゃ……」
「大丈夫だよ」
シルフィンはそれだけ言い、いよいよリーネを捕まえようとしている魔物に「スピール」と唱えた。
それにより、魔物の動きが急激に遅くなった。
そこで、私が「ゼルディクト」を唱える。
狙うのは、その花と根元を繋ぐ茎の部分。
シュバッ!という音と共に白い光が飛び、見事茎に命中、水平に切り裂いた。
魔物はその瞬間に動きを止め、崩れるように倒れた。
リーネはギリギリで捕まらずに済んだことで拍子抜けしたのか、「あれ?」という顔で魔物を見、私達を見てきた。
「……え、もうやったの?」
「うん」
「だったら、あたしおとりにならなくても良かった?」
「そんなことない。リーネのおかげで仕留められたよ」
シルフィンはリーネに、この魔物が魔法を含めた攻撃をつるで防ぐことができ、何かを襲おうとしている間くらいしかまともに攻撃の通るタイミングがないことと、今私の攻撃が通ったのは、リーネを狙ってつるを伸ばしている隙を突けたから、ということを話した。
リーネはそれを聞き、何とも言えない表情をした。
結果として痛い思いをせずに済んだわけだが、彼女としては自分が身を削っておとり役を演じ、そのおかげで私達が勝利を掴む……という展開を望んでいたのだろう。
行動の裏に自己顕示欲があったと考えると醜いが、まあそんなものだ。
ただし、それに直接は触れないでおいた。
今回私達がリーネに助けられたのは事実だし、そもそもこのダンジョン自体、彼女なしではここまで来られなかったのだから。
魔物を倒した後はすぐに出口についた。
そしてこれまでに入ったグループと同様、先生が出迎えてくれた。
「帰ってきたか。三人での冒険は、どうだった?」
「ちょっと緊張する場面があったけど、楽しかったです!」
「意外と難しい場面がちょくちょくありました。実際の冒険でも、こんな感じなのかなーって」
シルフィンとリーネがそう答える。
私は……このように答えた。
「実戦の訓練として、とても有意義な時間になりました。仲間の必要性を痛感し、必要のない存在がいないことを実感しました」
かしこまった言い方にリーネ達は驚いていたが、先生は二人の反応を聞いた時と同じように「そうか」とだけ返してきた。
あとは、試験の結果がどうなるかだ。




