102.振り子地帯
草を焼き払った通路を進んでいると、何かの音が聞こえてきた。
それは一定の間隔で鳴り響く奇妙な音で、奥に進むほど大きくなる。
その正体は、通路の突き当たりにあった小さな崖を登った先でわかった。
「うわ、何これ……!」
シルフィンだけでなく、私達も驚いた。
目の前にあるのは、まっすぐな通路。
……なのだが、なんと巨大な振り子のようなものが大きく揺れて、通路を折り返し横切っているのだ。
それも、一定の間隔を置いて何個もある。
振り子のエッジは斧のように鋭く、ぶつかればタダでは済まないことは明らかだ。
仮にそうでなくても、通路の左右には地面がなく、深い闇が広がっているので、ここにふっ飛ばされるだろう。
「ここ、テストのダンジョンなんだよね……?」
「そのはずだけど……それにしちゃ仕掛けがガチ過ぎるわよ!」
リーネに、全面的に同意する。
振り子はどれも天井からぶら下がっており、ガラガラッ……ガラガラッ……とすごい音を立てて通路を往復している。
昔……前世の子供の頃、ブランコで似たようなシチュエーションの遊びをやったことがあるが、あれとは迫力もスケールも違う。
正直言って、怖い。
「シルフィン、ここ以外の通路ってないの?」
「地図を見た限りない。ゴールに行くには、どうしてもここを通らなきゃ」
「そっか……」
幸いにして、振り子はみんな同じ速度で動いており、それぞれの間にスペースがある。
つまり、振り子と振り子の間に安全地帯があるのだ。
これなら、タイミングを間違えなければ行けるはずだ。
「怖いけど、行くしかないね。振り子が来るリズムを覚えて、タイミングよく間の安全地帯に行こう」
「まあ、そうせざるを得ないか。シルフィン、大丈夫?」
「うん……怖いけど、これはテストだし。乗り越えなきゃないものだから」
そうして、まずは私が先行した。
ガラガラッ……ガラガラッ……という音のリズム、振り子の来るタイミングを覚え、さっと振り子と振り子の間のスペースに入った。
足を止めてすぐに横を見たが、そこには迫ってくる振り子はない。
振り子は、私の三十センチほど前と後ろを通っていった。
「アリア、大丈夫!?」
「うん……大丈夫!二人も来て!」
リーネとシルフィンはしばらく話し合い、結局二人同時に飛び出すことにした。
そしてタイミングを見計らい、私のすぐ隣の安全地帯に飛び込んだ。
「ふーっ……よかった。でも、まだまだあるのよねこれ……」
通路はまだ先に続いており、振り子も当然複数箇所に設置されている。
巨大な振り子が目の前を通る時の風圧と、ガラガラッ……ガラガラッ……という音のリズムが、さらに恐怖をかき立てる。
だが、これに負けてはいけない。
私達はお互いに元気づけ合い、タイミングを絶対に間違えずに振り子の合間を縫って進む。
走っているわけでも戦っているわけでもないのに、すごくドキドキする。
──一歩間違えたら、即死だ。
無論、冷静になって考えるとこれはテストなので、そんなことはないのだろうが……それでも緊張感はすごくある。
通路の出口にたどり着き、恐怖の振り子地帯を抜けるまで……私達の表情と声に、余裕はまったくなかった。




