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灼炎の転生魔女 〜異世界で始めるいじめ復讐〜  作者: 明鏡止水


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10.土の天賦の少女

 翌日。

私はいつものように移動用魔法陣を使って学院へ向かい、いつものようにシルフィンたちと合流した。


そこから授業は特に問題なく進み、気づけば昼休みになっていた。


「今日の午後は、魔法理論だっけ?」


 シルフィンが弁当箱を開きながら言う。


「そうだね」


「なんな、眠くなりそうだなー」


マシュルが欠伸をする。


「授業前から言うことじゃないと思うよ」


ライドが呆れたように返した。


 そんな、他愛もない会話をしている時だった。


「あの……」


不意に、後ろから声が聞こえた。

私たちが振り向くと、一人の少女が立っていた。


少し長めのオレンジ色の髪に、同じ色の瞳。

土の天賦を持つ魔法使いだと一目でわかる。

身長は私たちと同じくらい。どこか柔らかそうな雰囲気を持った女の子だった。


「あの……ここ、座ってもいい?」


少女は少し遠慮がちに尋ねる。


「もちろん!空いてるよ!」


シルフィンが即答した。


「あ、ありがとう」


 少女はほっとしたように微笑み、空いていた席へ腰を下ろした。


「私、ノエルっていうの。ノエル・グレイス」


そう言って、軽く頭を下げる。


「私はアリア」


「私、シルフィン!」


「マシュル!」


「ライドだ」


順番に名乗ると、ノエルは嬉しそうに笑った。


「よかった。ちゃんと話せる人がいて」


「どういうこと?」


私が尋ねると、ノエルは少し困ったように笑う。


「私、人に話しかけるのがあんまり得意じゃなくて」


「あー、なるほどね。それで今まで一人だったんだ?」


シルフィンが納得したように頷いた。


「うん」


 どうやらこの子、かなり人見知りらしい。

今こうして話しているのも、結構勇気を出したのかもしれない。

少しばかり、ついこの前までの自分を重ねて見てしまう。


「てかさ、さっきから気になってたんだけど……ノエルも土属性なんだな!」


マシュルが明るく言う。


「え?」


「ほら、髪と目の色だよ!」


「……あ、うん」


ノエルは自分の髪に触れた。


「これ、生まれつきのものなの……私、土の天賦を持ってるから」


「やっぱり!おれも土なんだ!」


マシュルは妙に嬉しそうだった。


「そうなの?」


「見たらわかるだろ?同じ色の髪だし!それにさ、昨日の実技も見ただろ?」


「ご、ごめん……」


「いや、いいんだ!気にすんな!」


彼が豪快に笑うと、ノエルも小さく笑う。



 その瞬間、私は一瞬だけ固まった。


(あれ……?)


胸の奥が、微かにざわついた。


聞いたことのある笑い声……いや、違う。同じではない。

そのはずなのに。


おとといの入学式の日。昨日の学院を出る時。

あの時聞いた笑い声に、どこか似ている気がした。



「……アリア?どうしたの?」


 シルフィンが首を傾げる。


「あ……ううん」


私は慌てて首を振った。

気のせいだ、きっと。


だって、ノエルはどう見ても優しそうな女の子だ。雰囲気も、前世で私をいじめていた連中とは全然違う。

それに。


「あの……アリアさん?」


「え?」


「私、何か変なこと言ったかな……?」


 ノエルは不安そうな顔をしていた。

どうやら、私がじっと見ていたせいで心配させてしまったらしい。


「あっ、ごめん!違うの!ちょっと考え事してただけ!」


私は慌てて手を振る。


「そ、そう?」


「うん。だから、気にしないで!」


「ならよかった……」


ノエルは安心したように胸を撫で下ろした。


 その様子を見て、私は少しだけ罪悪感を覚えた。


私、何を考えているんだろう。

笑い声が似ていただけで、勝手に警戒して。

この子は何もしていないのに。


(前世のこと、引きずりすぎなのかな……)


そう思いながら、私は弁当を一口食べた。

もちろん、忘れられるはずはない。でも、今世とは無縁のこと。過ぎ去った過去のこととして、心の底にしまって生きていくべき。


自分に言い聞かせるように、そう強く念じた。



 その後の会話は普通だった。

ノエルは花を育てるのが好きなこと。

家では畑仕事も手伝っていること。

魔法より植物の方が詳しいこと。


話してみると、とても穏やかな子だった。

気づけば、昼休み終了の鐘が鳴っていた。


「じゃあ、また後でね」


「うん!」


「またな!」


「それじゃあね」


ノエルが立ち上がり、シルフィンが手を振る。

私も軽く手を振り返した。


 彼女は嬉しそうに微笑みながら、教室の自分の席へ戻っていった。

その背中を見送りながら、私は思う。


……たぶん、本当に気のせいだったのだろう。

あの笑い声も。胸のざわつきも。


少なくとも、この時の私はそう信じていた。

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