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DECIDE YOUR DESTINY2  作者: 北村タマオ
第3章 拡大する混沌
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0025 カオスへの葬列

 イラストリラ合衆国は、今更になって自分達が重大な戦略ミスを犯していた事に気が付いていたい。旧ソラージュ連邦との「冷戦」にて、世界中に軍隊を置いていた。何処かで共産種皮勢力が事を成せば、すぐに対応出来る為だ。それがいけなかったのかもしれない。物事は取捨選択であるが、イラストリラ合衆国は、そのあまりある力を過信して、惑星「ジーアス」の至る所に軍隊を置いていた。

 今回のメルートリア大陸への侵攻作戦は、その取捨選択の中でも、最悪の部類だったのかも知れない。大型護衛空母4隻、搭載機数380機と言う戦力は、なる程確かに強力であるが、これを動かすのにどれだけの財力と人力を使う事になるのか、事情を知っている人間が居たら、背筋が凍り付く筈だ。

 380機の艦載機、そしてそれを操るパイロット。一機一人用意して、ベストコンディションにて動かすのに、どれだけの金が必要なのか。知っている人間が聞けば、今回の挙兵については無謀が過ぎていた。作戦自体は悪くは無いかも知れないが、前提条件として作戦そのものが無謀であった。

 既に本年度の国防予算は足が出ている。大統領府は「第3次「ジーアス」戦争の時来る!」としてキャンペーンをはっているが、そんなもので国民の理解は得られない。なにしろ、戦争の結果として生活が改善されなければならないのだ。今回のこの挙兵で、もし成功したとしてオ、落としどころを間違えたら、それこそ10年戦争になりかねない。


 これについて、積極的反撃派と、消極的防衛派に、メルートリア大陸の「アウシウ」の軍部は分断されていた。陸海空全軍をかけて反撃するべきであるとする意見と、メルートリア大陸を全てカバーする防空体制を敷いて、敵戦力が摩耗した所を討つべきだとする意見に、である。

 北沙羅樹国から送り込まれた、奇跡の勝利を重ねる恵美・マギアは、その中で自分意見を展開していた。

「積極的反撃は、今の所は自殺行為であります。敵もまた、それを期待して防御を固めているのに違いありません。大型護衛空母は、細かいところで正規空母に見劣りする部分が散見され始めているのですが、4隻も揃えばその高い攻撃力で相殺されてしまいます。エスコート艦の駆逐艦のイージスシステムも侮ってはいけません。下手をすれば、我々は緒戦で航空戦力を全て失って大敗するに違いありません」

「同じ様に、消極的防衛派もまた無謀です。敵はこのメルートリア大陸に橋頭堡を築いたら、こちらが対処不可能な空軍力を派遣して、こちらの航行戦力は磨り潰されてしまいます。そうなった時点で、積極的反撃を行っても意味はありません」

 イラストリラ合衆国の艦隊を退けた魔女の意見であるだけに、その言葉には説得力があった。敵を知り、それ以上に味方を知る恵美の意見は、「アウシウ」の作戦士官達を納得させていた。

「しかし、もう円津海峡海戦の様な奇策が通じる事はありません。ここは1つ、用兵の基本に立ち直りましょう。敵の橋頭堡を構築させて、その補給線を攻撃しながら、こちらは積極的防衛策でもってこれに対抗する。それしかありません」

 居並ぶ作戦士官達は、恵美・マギアの意見に肯定的であった。確かに、第1次円津海峡海戦の様な物量作戦は、メルートリア大陸の「アウシウ」同盟軍でも出来ない。かと言って、伏兵による防衛戦には細心の注意を払ってくるだろうから、これも没だ。

 だとすれば、残されているのは作戦の常道。一旦、基地を造らせて、補給線を叩きつつ、弱った本隊を討つ。これしか無い。無論、それに対してはイラストリラ合衆国も最大限警戒しているだろうから、相応の血と油が流されるのは仕方が無い事だ。

しかし、かなり深刻な議論になったのは、イラストリラ合衆国の第1・第2艦隊が何処に橋頭堡を築くのが何処の土地なのか、と言う問題についてであった。一番有力視されていたのは、島国であるアストラ連邦王国の北端の島、アイスカル島である。アストラ連邦王国から絶妙な位置まで離れており、それでいてここに航空機を置けば、メルートリア大陸全域を攻撃範囲内に収める事が出来る。

 問題は、敵が補給船団に充分な護衛をつけていたら、であったが、3正面作戦を強いられているイラストリラ合衆国に、そんな力があるのかは疑問視されていたが、その希望的観測を恵美・マギアは一蹴する。

「イラストリラ合衆国の海軍力ならば充分可能である。補給線を断つ為に、こちらは全海軍力を動員する」

 他の作戦士官は黙る。ここは1つ、このラシア共和国と北沙羅樹国との混血一家の意見を聞くしか無さそうであった。


そして尚、艦隊が出撃しても尚、この出兵に反対するものがイラストリラ合衆国にも存在していた。昨今、急速にその勢力を伸ばし続けている2つの政治団体、「RSIU」と「MIUA」。この2つの政治団体は、メルートリア大陸への侵攻作戦が如何に無謀なのかを説き、国民に対して作戦に関する事業のボイコットを呼びかけていた。今でこそ問題になるレベルの騒ぎにはなっていないが、後々の作戦遂行に支障を来すレベルにはなると誰もが思っていた。

 この2つの政治団体は、今でこそ呉越同舟という感じで、「停戦」という同じゴールに向かっているが、問題はその後だ。舟がゴールに辿り着いたら、玉座をめぐって激しく対立するのは目に見えている。そして、その頃にはこの国の政治を担ってきた2大政党はその力を失っている事も分かっていた。

 もしこの作戦が失敗したら。いや、これは最初から失敗を約束された作戦であった。現政権。ゲーテル・デバイ大統領が最後にその権力を使う機会を用いて、一発逆転を狙っているのだ。完全なギャンブルであるが、ギャンブルと言うのは元々損をする様に設定されているので、これは最初から負けが決まった作戦である。

 人身御供としては多すぎて、棺としては高価すぎる艦隊は、西海洋を航海していた。


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